大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

笠松を歩く。 〜桜の下、赤い電車が今日も走る

名鉄名古屋駅も、ずいぶんと綺麗になったものだと思う。

通学に使っていた20年以上前は、もっと薄暗くてアンダーグラウンドな雰囲気があったように思う。
ホームが地下にあるのも、その印象を強くしているのかもしれない。

快速特急・岐阜行に乗ると、電車はすぐに地上に出る。

須ヶ口駅を過ぎると、車体は大きく右にカーブを切っていく。
毎日通学で乗っていた津島線と分かれ、名古屋本線は岐阜に向かう。

踏切、幼稚園、商店街…生活動線になっている沿線沿いを愛でながら、電車は走る。
国府宮、名鉄一宮に停車し、ほどなくすると笠松駅に着いた。
笠松駅は、木曽川の堤防沿いにあり、近くの奈良津堤が桜の名所である。

笠松駅から歩くこと10分ほど。
「飛騨・美濃さくら三十三選」に選ばれたことを記念した石碑があった。

f:id:kappou_oosaki:20210331162403j:plain

以前はしだれ桜が有名だったそうだが、戦後はソメイヨシノを植樹したことで、いまの景観となっていると聞く。

花はいまが盛りで、もうちらほら葉桜になっている木もあった。

葉桜が好きな私にとっては、一番いい時期だったのかもしれない。

f:id:kappou_oosaki:20210331162413j:plain

川沿いを歩いていくと、笠松みなと公園に着いた。
千本桜とも呼ばれる、桜の名所。

f:id:kappou_oosaki:20210331162608j:plain

川沿いの桜並木が、美しく。

f:id:kappou_oosaki:20210331162550j:plain

石段に腰掛け、ひとやすみ。
花を見上げ、愛でる。

少し、呼吸が深くできたような気がした。

f:id:kappou_oosaki:20210331162620j:plain

遠くに見える橋の上を、いま乗ってきた名鉄電車が通る。

いつも乗っていた、赤い、電車。

今日も、多くの人を運んでいるのだろうか。
さまざまな人の、想いを、いまを乗せて、電車は走る。

f:id:kappou_oosaki:20210331162254j:plain

満開に咲き誇る花も美しいが、葉桜の美しさは格別だ。

はじまりと、おわりが、集う場所。

葉桜を眺めていると、そんな心持になる。

f:id:kappou_oosaki:20210331162354j:plain

電車が通る桜の名所ということで、大きなカメラを構えた方が何にもいらしゃって、シャッターチャンスをうかがっていた。

わたしも桜並木と電車を一枚に収めたくて、シャッターを切ってみたが、やはりスマートフォンのカメラでは限界があるようだ。

その方々が持っていたバズーカのようなカメラが、少し、うらやましくなった。

f:id:kappou_oosaki:20210331162240j:plain

わたしが通学で乗っていた、真っ赤な電車は、もう旧型になってしまったようで。
いまの電車は、白と赤の配色になっていた。

時の流れとともに、少しの寂しさを覚えながら。

それでも、時折、真っ赤な電車も通過していた。

父の愛した、真っ赤な電車。

仕事人間だった父を思い出し、しばし桜を愛でる。

f:id:kappou_oosaki:20210331162247j:plain

菜の花も、いまがさかりのようだった。

淡いピンクと、鮮やかな黄色と、赤い電車。

その風景を、ぼんやりと眺めていた。

左から、赤い電車が過ぎ去っていく。
右から、真っ赤な電車が走る。

赤い電車よ。
父の愛した、赤い電車よ。

今日も走れ。

たくさんの人を、その想いを、その人のいまを、乗せて。
走れ、赤い電車。

何度も何度も、わたしはその言葉を想った。

自分へのメッセージであろう、その言葉を。

走れ、赤い電車。