夏の日の夕暮れは、どこか倦怠感があります。
日の出が早く、どうしても一日の活動時間が長くなる分、気怠くなる時間なのでしょうか。
徐々に穏やかさと暖かみを増していく陽の光と、掠れかけた蝉の声は、どこか終わりの寂しさを感じさせます。
ついさっきまで燃え盛っていた炎は、いつしか熾火のようになり。
夏の夕暮れには、そんな情感を覚えます。
ひらひらと、黒い翅が待っていました。
黒いトンボ。
ハグロトンボのようでした。
翅の黒いトンボには、縁があるようです。
切れてしまったつながりを探しに、多度の山を登ったとき、山中で先導してくれたのが、この翅の黒いトンボでした。
調べてみると、神様トンボ、極楽トンボ、仏トンボなどの別名があるようです。
翅が閉じたり開いたりする姿が、神様に手を合わせる仕草に似ているとか、お盆の時期によく見かけるので、ご先祖様が帰ってきたように見えるとか、由来は諸説あるようです。
ひらひらと舞っていた神様トンボは、草むらの陰に隠れてしまいました。
ずいぶんと、夕暮れの時間が長くなってきたような気がします。
過ぎ行く時間を、想う夕暮れでした。