10月に入って、少しまた暑さが戻ってきたようでした。
熱田神宮へ向かう車中は、元気な太陽にじりじりと照らされて、冷房のスイッチに手が伸びました。
そろそろ衣替えだなと思いつつも、まだ半袖で十分なようです。
駐車場に車を停めて降りると、金木犀のあの香りが鼻腔をくすぐりました。
あぁ、またこの香りの季節がやってきたのだな。
秋が深まってきたな、とその香りに身を浸します。
秋が、深まる。
春も、夏も、冬も、「深まる」とは言わないのに、なぜ秋だけが「深まる」と表現するのか、不思議に思います。
それでも、この秋の季節の移ろいは、「深まる」と表現することがぴたりとくるような気がします。
気持ちのいい秋晴れの日。
こんな日に参道を歩けるのは、ありがたい限りです。
南の大鳥居の前で。
ぼんやりとその鳥居と秋の空を見上げる私のその後ろで、黒塗りのセンチュリーが音もなく停まり、窓に白いレースのかかった後部座席から、年配の男性が降りました。
ビッと決まった黒いダブルのスーツ。その色から、仕立てのよさが感じられます。
男性は、深々と鳥居に向かって一礼して、ゆっくりと参道に向かって歩き始めました。
その横では、小さな男の子が、母親と思わしき女性に手を引かれて歩いています。
いろんな人が、いろんな想いを持って、境内を訪れる。
こころしずかに参道を歩き、そして、みな同じように手を合わせ、頭を垂れる。
どこかそれは、面白いものだな、と感じます。
私も、そのなかの一人なのですが。
参道をゆっくりと歩いていると、遠くで鶏の鳴き声が。
今日も、元気なお声を聴かせてくださいました。
その声を聴きながら、深呼吸をします。
心地よい秋の風を胸いっぱいに満たして、また参道を歩いていきます。
10月の陽の光に照らされた参道は、ほんとうに気持ちがいいものです。
秋という季節のよさを、また一つ実感して。
手をあわせて、頭を下げてきました。
いよいよ、秋本番のようです。