白き桜の女王、ソダシの初ダート参戦により、大いに盛り上がった、冬のダート中京決戦、チャンピオンズカップ。
ソダシの父・クロフネは、このチャンピオンズカップの前身であるジャパンカップ・ダートを圧巻のレコード勝ちをしており、ダート適性への期待を込めての参戦。
前走・秋華賞での大敗を、この中京の砂の上での復活を期待し、ファンは2番人気の支持を送る。
そのソダシに与えられたのは、最内1番枠の白い帽子。
12月上旬にしては冷え込んだ風が吹きすさぶ中、ダート王者決定戦のゲートが開く。
初ダートに最内枠となれば、包まれて砂をかぶるのを嫌がって前目の競馬、あるいは「逃げ」の一手に出ることは想定の範疇だろう。
果たして吉田隼人騎手は、五分の出からソダシをじわりと先団に導く。
外からは、それほど積極的にハナを主張する馬はおらず、ソダシは楽な形で先頭に立ち、1コーナーに入っていった。
逃げる可能性があった絶好4番枠のインティと武豊騎手は、無理せず番手の外目を自然にキープ、さらには2番枠のミルコ・デムール騎手のカジノフォンテンもそれに倣ったことで、枠なりの馬群が形成された。
1番人気に支持されていた今年の帝王賞馬、テーオーケインズと松山弘平騎手は先団の5,6番手あたり、そしてこのチャンピオンズカップの昨年の勝ち馬・チュウワウィザードと戸崎圭太騎手はちょうど中団あたりをキープ。
有力馬の一角、16番枠のカフェファラオとクリストフ・ルメール騎手は、そのチュウワウィザードの後ろから若干押し上げていく態勢。
初ダートを逃げるソダシの刻んだラップは、前半5ハロンを1分1秒4。
余力を持ったペースのようにも見えたが、4コーナーに差し掛かったあたりで、すでにその手ごたえはかなり怪しくなっていた。
直線に入って早々、そのソダシをかわして先頭に立ったインティだったが、その外から抜群の手応えでテーオーケインズが伸びてくる。
松山騎手が追い出すと、素晴らしい脚でさらに伸びる。
寒風を切り裂き、砂塵を突き抜け、一頭だけの独走態勢。
粘るインティに坂井瑠星騎手のアナザートゥルースが並び、さらに外を回した戸崎騎手のチュウワウィザードがその争いに加わるも、先頭のテーオーケインズからは大きく離れていた。
テーオーケインズ1着。
圧巻の6馬身差でのJRA・GⅠ初勝利は、もちろん中京を「庭」とする松山騎手の完璧なエスコートがあってこそだが、それにしても抜け出す際の脚は、GⅠではなかなかお目にかかれないほどに際立っていた。
帝王賞勝利から、金沢でのJBCクラシックはミューチャリーの後塵を拝したものの、見事に立て直してダート王の座に返り咲いた。
生産のヤナガワ牧場にとっては、あのキタサンブラックの引退レースとなった2017年の有馬記念以来となるGⅠ勝利だった。
振り返れば、昨年夏に発生した栗東での火災で、このテーオーケインズも、当週の登録を取り消すなどの被害を受けていた。
その不運をもろともせず立て直し、この中京での戴冠に至るまで持ってきた陣営には、賛辞を贈りたい。
まだ4歳、来年以降も間違いなくダート戦線の主役となるテーオーケインズ。
今後もあの惚れ惚れするような末脚を楽しみにしている。
2着には、接戦を制した戸崎騎手のチュウワウィザード。
前年の覇者として力を見せたが、勝ち馬に比べて序盤から厳しい展開だったか。
着差は大きく開いたが、地力はそこまで離れていないように見える。
なにより、今年3月のドバイで大いに沸かせてくれた同馬でもある。次走での巻き返しに期待したい。
3着には人気薄だったアナザートゥルース。
どのレース、どの相手にも堅実な走りで、ここでも自身の力を出し切った。
坂井騎手の立ち回りも光った。
ソダシは直線早々に力尽き、12着に大敗。
初ダートがGⅠと、厳しい条件だったが、それ以上に前走に続いて走ることにネガティブなイメージを持ってしまったような感を受ける。
白毛馬初のGⅠホース、その美しき純白の走りがまた輝くのを待ちたい。