すべての人が勝者になれる世界があると聞いたら、どう感じるでしょうか。
勝ち負けを競って一喜一憂するよりも、全員が勝者の世界。
それは桃源郷のように聞こえるかもしれませんが、案外ビジネスの世界ではそれに近い感覚があるのかもしれません。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.すべての人が勝者でなければ、それは真実ではない
競争や主導権争いにおいて「勝者」と「敗者」がでれば、敗者が逆襲してくるのは時間の問題です。
本当にうまくいくのは、両者がともに、あるいはそこにいるすべての人が全員勝つ、という場合だけです。
そうした状態は、見せかけの利益にとらわれた場合と違って、より高いレベルへとむかうエネルギーの流れによって築かれます。
主導権争いをしている両者は、どちらも何らかの真実のエネルギーをもっています。
自分に誠実になってつながりあったとき、そのエネルギーがひとつになり、両者の見方が統合されて新しいヴィジョンが生まれます。
それこそが真実なのです。
ですから、すべての人が自分は勝者だと感じられないかぎり、妥協しないでください。
コミュニケーションや話しあいを途中で投げださないことです。
妥協を受け入れてしまえば、すべての人が自分は敗者だと感じ、犠牲になったと感じることでしょう。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.38
2.すべての人が勝者になれる
勝者と敗者、あるいは被害者と加害者
「勝ち負けをつける」というのは、ある意味で、人の本能的なものなのかもしれません。
いろんなランキングが世にはあふれてますし、スポーツを好むのも、勝ち負けがはっきりするからかもしれません。
そのスポーツでは、敗者は次の機会のために、また練習に励むことでしょう。
次の勝者になるという目標を立て、それに向けて努力したりします。
敗北と挫折が多ければ多いほど、次の勝利のカタルシスは格別です。
友人に生粋の広島カープファンがいるのですが、2016年に25年ぶりのリーグ優勝を飾った時の喜びようは、うらやましい限りでした。
近年低迷している、我が中日ドラゴンズも、そんなカタルシスが訪れることを願っておりますので、どうかお願いします、立浪新監督・・・
すいません、横道にそれました。
時に喜びやドラマを与えてくれる「勝ち負け」ですが、それを心の世界で繰り返してしまうと、疲弊するばかりです。
敗者は常に勝者と入れ替わろうとし、勝者は気が気ではありません。
似たような話に、被害者と加害者というものがあります。
「あの人に傷つけられた!」と誰かを責めた瞬間に、被害者は加害者になります。
加害者と被害者が、入れ替わってしまうのですね。
その入替は、終わることなく延々と続きます。
そこに、心の安寧はありません。
犠牲でもなく、全体最適でもなく
勝者・敗者ではなくて、すべての人が勝者になる。
そうすることができる、というのが今日のテーマです。
このあたり、頭では分かっていても、なかなか難しい感じがします。
そんな状態になるためには、誰かが犠牲にならないといけないのではないか。
誰かが犠牲になってしまったら、その人は敗者ではないのか・・・
あるいは、全体最適を求めるのならば、誰かが我慢しないといけないのではないか・・・
世の中を見ていると、そんなことを思い浮かぶかもしれません。
しかし、そのいずれでもなく、全員が勝者になれる道がある。
ラグビーの世界では、試合終了を「ノーサイド」といいます。
試合が終わったら、どちらのチーム(=サイド)もなく、みんな味方、という考え方だそうです。
もしかしたら、そんな感覚に近いのかもしれません。
すべての人が、勝者になれる世界。
それをイメージし、信じることから、まずは始めましょう。
3.ビジネスにおける相似
経営の神様の教え ~売り手、買い手、世間の「三方よし」
家族やパートナーといった私的な関係で、「全員が勝者」は、なかなかイメージしづらいかもしれません。
あまりにも、利害関係がありすぎると、難しいものです。
しかし、少し目を広げて見ると、意外なところでそのイメージに近い世界が見つかります。
ビジネスの世界では、「全員が勝者」のモデルを目指していると見ることもできます。
ビジネス=弱肉強食で、強い者だけが残る、儲ける、というイメージを抱く方もいるかもしれませんが、決してそうではないように思います。
経営の神様と称された故・松下幸之助さんは、商売における心得として、売り手・買い手・世間の「三方よし」を説きました。
これは、聖人・善人のように見えるかもしれませんが、「そうした方が、結果的に自分にとっても利益になる」というリアリズムに、私には聞こえます。
自分だけ利を取る(=勝者になる)というモデルは、長続きしないと見ていたのではないでしょうか。
松下哲学が古典になって久しいですが、現代のビジネスでも、「ペイ・フォワード」や「恩送り」といった考え方がよく言われます。
時代が変わっても、本質的なことは変わらないのかもしれません。
それはともかくとして、「全員が勝者」という世界が、身近に存在すると思うだけでも、違うのではないでしょうか。
妥協しないこと、投げ出さないこと
さて、「全員が勝者になれる」世界があるとして。
その世界を実現するためには、妥協しないことが重要だと本書は言っています。
すべての人が勝者になれるまで、妥協せずにコミュニケーションを取り続けることが必要になります。
そのためには、「すべての人が勝者になれる」世界が、必ず「ある」と信じることが必要になるのでしょう。
イメージの力というのは、大きいものです。
全員が、勝者になれる世界。
誰もが妥協も、我慢もしない世界。
それは、どんな世界なんだろう。
そうやって想像することから、すべては始まるようです。
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