傷は、やさしさに変えることができる。
懐かしい海援隊の「贈る言葉」にも同じようなフレーズが出てきますが、私の大好きな言葉です。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.傷はやさしさに変えることができる
傷ついた気持ちに抵抗せず、そこでちぢこまらなければ、そのとき「やさしさ」というすばらしい気持ちが経験できるのです。
傷に抵抗しなかったとき、私たちの心には「開き」が生まれ、そこに、過去の痛みが出てきて、癒されることが可能になるのです。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.254
2.歌、あるいは芸術が伝えること
今日は、引用文のタイトルだけで、それ以上は蛇足になりそうな気がします笑
しかし、頑張って書いてみようと思います。
海援隊「贈る言葉」より
私が小学生の頃だったでしょうか。
音楽の授業の教科書に、「贈る言葉」という歌が載っていました。
かの武田鉄矢さんがボーカルを務めた、フォークグループ「海援隊」の歌でした。
テレビドラマ「金八先生」の主題歌でしたね。
授業でその歌を聴く機会があったのですが、とても心を惹かれたことを覚えています。
暮れなずむ町の 光と影の中
去りゆくあなたへ 贈る言葉
「贈る言葉」海援隊
この歌い出しに、とても惹かれたものです。
三つ子の魂、なんとやらと言いますが、私は当時からこうした別れ、寂寥感といったものに、惹かれていたようです。
その「贈る言葉」の中でも、サビの部分に、心惹かれたものでした。
悲しみこらえて 微笑むよりも
涙かれるまで 泣くほうがいい
人は悲しみが 多いほど
人には優しく できるのだから
まさに、今日の引用文の通りですよね。
なぜ、こんな渋い部分に、小学生の私が惹かれたのかは、謎ですが笑
芸術と現世(うつしよ)
歌に限らず、芸術というのは、人の心を慰め、癒してくれるものです。
それは、ずっと昔から、変わらないのでしょう。
愛する人を待つ気持ちを詠った、平安の世の和歌。
千年以上の時を経て、その和歌は私たちの心を打ちます。
そして、そこで歌われる、あるいは表現されるものというのは、ある種の「橋渡し」であるような気がします。
現実と、夢。
表層意識と、深層意識。
今世と、永遠。
男性と、女性。
かなしみと、よろこび。
時に分離してしまう、そうしたものをつなぐから、名曲と呼ばれるものは歌い継がれ、人は芸術を愛するのでしょう。
それは言い換えると、「この現世(うつしよ)では、できないこと、みえないこと」だからこそ、なのかもしれません。
それを、すぐれた表現者は、詩に乗せ、言葉に乗せ、色彩に乗せ、踊りに乗せて、訴えかける。
そんな風に感じるのです。
そうだとするなら、歌のなかに、芸術の中に見えるものは、この世ではなかなか見えないことなのかもしれません。
翻って考えるに、先ほど引いた「贈る言葉」の歌詞。
人は、なかなか悲しいときに、涙が枯れるまで泣くことができない。
ほんとうに悲しいときには、かえって涙をこらえて、微笑んでしまう。
だからこそ、「贈る言葉」が歌い継がれるのかもしれません。
そして、もう一つの歌詞。
悲しみが多いほど、人はやさしくなれる。
それもまた、私たちが目を逸らしてしまいがちな、一つの真実なのでしょう。
3.悲しみを、そのままに。
悲しみを、恩恵に変えること
悲しみや傷は、やさしさに変えることができる。
ただ、悲しみを抑えたり、なかったことにしようとしてしまうと、それはなかなか難しいのかもしれません。
悲しい気持ち、あるいは痛みに抵抗せず、それをそのままにして感じ切ること。
悲しみを、そのままにしておくこと。
感じることを、開くということ。
そうすることでしか、悲しみを癒すことは、できないのでしょう。
どこかに隠したり、無かったことにしたり、消し去ったりすることは、できないようです。
悲しみに抵抗しなければ、それは恩恵に変えることができる。
しかし、残念なことに、それは悲しみを感じている本人以外に、誰もできることではありません。
その人の悲しみを、誰か他の人が癒すことはできません。
悲しみは、ただただ、その人が感じ切ることでしか、癒すことはできません。
それは、私がカウンセラーとして、最も無力さを感じる点の一つでもあります。
しかし、その悲しみや傷に、光を当てることは、できるように思うのです。
その悲しみは、その痛みは、必ず恩恵になる。
あなたが、どんな痛みの中にあったとしても。
「それがあったからこそ、やさしくなれた」
いつかあなたがそう言うことを「信じる」ことは、私にできることです。
それは、ずっと持ち続けていたいと思うのです。
「傷は、やさしさに変えることができる」
私の大好きな、本書の一節です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
〇大嵜直人のカウンセリングの詳細はこちらからどうぞ。
※ただいま満席となっております。
※7月26日(火)より次回8月度の募集を開始いたします。
〇カウンセリングのご感想のまとめはこちら。