心理学で重要なテーマである、「手放し」。
執着を手放し、自分を自由にしてあげるという、心理的な態度を指します。
それは、自分のみならず、相手に、世界に、大きな恩恵を与えてくれるものです。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.何かを手放すと、かならず次にはもっといいものがやってくる
しがみつくことは、自分に何も受けとらせないようにすることです。
手放したときには、その関係を新しいレベルで受けとるか、そうでなければあなたにとってより真実の関係を受けとります。
いずれの場合もあなたは、いまよりはるかに幸せになることでしょう。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.106
2.「手放す」ということ
今日のテーマは、「手放し」でしょうか。
心理学では、よく出てくるテーマの一つであり、また最も重要な考え方の一つです。
手を握りしめていると、新しいものは掴めない
「手放し」とは、文字通り「手を放すこと」。
なにかを掴んでいるとき、そこに執着をしていると見ることができます。
よくあるのは、パートナーシップなどの人間関係ですが、お金、仕事、家…いろんなものに、私たちは執着したりします。
「これを手放したら、とっても損をする気がする…」
「これは絶対に手放せない」
そんな心理から、ムギュギューッと何かをつかんでしまうことは、よくあることだと思います。
しかし、両手で何かを掴んでいたら、そこにしがみつくことはできるかもしれませんが、新しいものがやってきたときに、つかめないわけですよね。
あ、千手観音さまのように、手がたくさんある方は別ですよ笑
そこで、「手放し」です。
言葉で表現するならば、執着を手放し、自分を自由にしてあげること、と言えるでしょうか。
自由とは、自分に選択肢があること、と言えます。
「私にはこの人しかいない」、「この会社でしか働けない」というような想いがあると、とても窮屈になってしまいますよね。
「手放し」とは、そうしたぎゅっと握り締めた手を、そっと開くイメージでしょうか。
手放したからといって、必ずしも別れたり、離職したりするわけではありません。
開いた手で、また同じものを掴むのも、自由です。
「いい人はたくさんいるけれど、私はこの人を選ぶんだ」
「いろんな会社があるけれど、やっぱりここで働きたい」
というように。
「手放し」とは、自分を、そして相手を自由にしてくれます。
「手放し」と「許し」の相似性
この「手放し」が重要なのは、こちらも最重要テーマである「許し」と、相似性があるからのように思います。
以前にも書いたような気がしますが、「許し」とは心理学のなかで最重要人物(?)です。
心理学における主人公といっても、いいかもしれません。
「許し」とは、相手や起こった出来事に対して、それを主体的に受け入れることであり、特に罪悪感から自分を解放してくれる恩恵があります。
その対象は、ひどいことをしてきた相手(他人)などに限りません。
「社会」や「世間」という広い対象の場合もありますし、「自分」を許すというもの、大切なプロセスの一つです。
この「許し」に至るプロセスは、
〇感情の解放
(自分の内面に余裕をつくる)
↓
〇感情的理解
(もし自分が、相手の立場だったら…という想像力)
↓
〇感謝
(その相手、出来事に「ありがとう」)
↓
〇恩恵を受けとる
(いきいきとした活力、ライフワーク・真実のパートナーを見つける、セクシャリティの解放、愛とつながる、などなど)
というプロセスをたどるのですが、そのなかの「感謝」が「手放し」と相似があるように思います。
執着していた人やものを、手放すことができたとき。
その相手に、感謝の念がわき、その相手の幸せを祈ることができます。
誰だって、好きだったパートナーにフラれてしまったら、しばらくは執着してしまうでしょうし、恨みつらみも出てくるでしょう。
しかし、時間が経つにつれて、自分の内面と向き合い、そのパートナーとの思い出を過去のものに消化していくこともあるでしょう。
あるときふっと、その人のことを思い出して、
「いま何してるかな」
「いろんなことがあったけど、出会えてよかったな」
「幸せに暮らしてるといいな」
と思える瞬間が、訪れるかもしれません。
その相手の幸せを祈る、というのが、「手放し」の象徴だと私は思うのですね。
自分の執着、あるいは傷や痛みを越えて、誰かのことを想い、幸せを祈ること。
そんなとき、相手との関係性を過去のものにして、「いま」に意識を置くことができています。
「いま」を生きるということは、自分に最大の自由を与えている瞬間です。
このように、「手放し」はさまざまな大きな恩恵を、私たちに与えてくれます。
そしてそれは、「許し」と似ている部分があるようです。
だから、心理学での最重要テーマなのでしょう。
また、そのプロセスで出てくる「感謝」が、いかにパワフルであるか、なのでしょう。
3.手放し、祝福しよう
すでに書きましたが、手放すことは、見捨てることではありません。
固く握りしめた手をいったんゆるめ、そしてもう一度選び直す、というイメージです。
ゆるめた手に、何が入ってくるのかは、分かりません。
ゆるめる前には、想像していなかったような素晴らしいものが、入ってくるかもしれません。
あ、今日の引用文に書いてありましたね笑
手放すと、もっといいものがかならず入ってくる、と。
きっと、そういうことなのでしょう。
何が入ってくるかは、おまかせして。
自分を自由にして、「いま」に意識を向け続けましょう。
最後に、本書の素敵なワークをご紹介したいと思います。
■今日は古いものを手放し、次にやってくるものを歓迎する日です。
宇宙は真空をきらいますから、からっぽの空間があれば即座にうめようとして、何か新しいものをよこしてくれます。
ですから両手をからにして、そのまますわっている勇気をもちましょう。
同上 p.106
そうなのですよね、両手をからにしてすわっていることは、意味がないと生きられない現代の私たちにとって、怖いものですよね。
でも、勇気をもちましょう、と教えてくれます。
「手放し」に必要なのは、勇気なのでしょう。
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