誰でもけんかをするのはイヤなものです。
しかし、けんかをしているときは、自分自身が失われた一部を取り戻すチャンスです。
けんか相手は、自分が抑圧してしまった、失われたかけらを持っているのですから。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.けんか相手は、あなたを完成させるのに必要な「失われたかけら」をもっている
けんかをすることは、あなた自身の「失われたかけら」を取り戻す格好の機会です。
闘っている相手は、あなたが失ってしまった何かを表現しています。
この人に近づいていって、あなたの価値判断を手放したとき、相手が救われるようなかたちでつながることができます。
あなたのほうから手をさしのべ、相手が入ってこられるように扉を開いたなら、あなたの重要な「失われたかけら」をその人から受けとることができるのです。
それはあなたにとって、まったく新しいレベルでの成長をもたらすことでしょう。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.98
2.どこかで失くした、自分のかけら
今日の引用文は、いろんな示唆に富むものです。
一つのテーマになるのは、やはり「投影」でしょうか。
けんか相手が、持っているもの
心理学で、最も重要な概念の一つである「投影」。
自分の感情や過去の経験、あるいは価値観といったものを、自分の周りの人やものに映し出す現象です。
同じものを見ても、何を感じるかは、人それぞれです。
夕焼けを見て、「何と美しい景色なんだ!」と感嘆する人もいれば、どこか寂しい感じを受ける人もいます。
「できごとは、ニュートラル」。よくそう言われます。
無色透明の人やものに、自分の感情やフィルターといったもので、さまざまな色をつけるのが、私たち人間のようです。
そうした視点で見ると、「けんか相手」というのは、実に示唆に富んでいるようです。
けんかをするぐらいですから、何がしかの許せないことがあったり、嫌いだったりする面があるのでしょう。
ではなぜ、そうした面をイヤだ、嫌いだ、と感じるのでしょうか。
「投影」という視点で考えるのならば、自分の中に、その忌み嫌っている面がある、と見ることができます。
いやですよねぇ、ほんと…泣
何がしかの理由があって、「これは、ダメな面。こんな私でいては、いけない」と感じると、人は自分の一部を、抑圧していきます。
そうして抑圧された自分は、決して勝手に消えることはありません。
心の奥底に沈んだその一面を、私たちは周りの人に「投影」します。
けんか相手の、許せないあの人。
その人は、実は失われた自分のかけらを、持っているのです。
どこで、失くしてしまったのだろう?
あんなイヤな奴が、自分の失われた一部を持っているだって?
あんまり、考えたくないですよね笑
けれども、強い嫌悪感を感じるほど、そこには何がしかの心理的な意味があります。
何もなければ、私たちの心が反応することも、ないのでしょうから。
まずは、「えぇ、イヤだなぁ…」と感じて、いいんだと思います。
イヤなものは、イヤ。
そう感じることを禁じることは、強い自分の否定になってしまいますから。
その上で、なのですが。
「もし」という枕詞をつけて、考えてみてほしいのです。
「もし、そうだとするなら、私はそれをどこで失くしてしまったのだろう?」
けんか、というのは価値観の対立と言えます。
自分の価値観が脅かされそうになるほど、人は必死になってけんか相手に立ち向かいます。
しかし、相手の価値観が、自分の失くしたものだとしたら。
それは、どこで失くしてしまったのだろう。
もちろん、すぐに答えの出る問いではないと思います。
しかし、それを考えることは、実に私たちの人間性を深め、自分の心と向き合わせてくれます。
3.自分から、手を差しのべること
自分にはその状況を変える力がある、という信頼
さて、今日の引用文では、そうしたけんか相手に、自分の方から近づくように言っています。
この人に近づいていって、あなたの価値判断を手放したとき、相手が救われるようなかたちでつながることができます。
この「自分から」というのが、非常に重要です。
誰でも、自分の価値観を手放したくないですし、相手が譲歩するべきだ、と思います。
しかし、それは相手が変わるのを待つ、という非常に受け身で、依存的な態度です。
そうではなくて、「自分から」手を差しのべる。
それは、どんな状況であれ、「自分が」その状況を変えていける、という信頼でもあります。
けんか相手に、自分から歩み寄り、手を差しのべる。
仕事でも、パートナーシップでも。
そうした行為は、非常に抵抗を感じますし、人としての成熟性を求められます。
しかし、その困難を越えて、手を差しのべたとき、新しい自分に出会うことができます。
けんか相手は、失われた自分のかけらを持っている。
ご参考になりましたら、幸いです。
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