誰かと心理的に対立していると、どうしても「私が正しい」と我を通したくなります。
しかし、たとえその正しさを無理やり押し通したとしても、なぜか満たされないものです。
そうした不毛な「主導権争い」を解消するための、一つの見方をお伝えします。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.対立を解決するには、より高い共通の目的をもつこと
どんな対立も、より高い共通の目的がなければ、すぐに主導権争いへと転落してしまいます。
たとえパートナーをコントロールすることに成功して、あなたのやり方でやらせたとしても、なぜかあなたの欲求は満たされず、相手に対する関心は失われていきます。
でも、二人のどちらかの見方も、パズルを完成させるために必要な一ピースだということがわかれば、いっしょにもっとすばらしいものを創造することができるのです。
より高いレベルの目的のために対立を解決していくのです。
対立している両者の見方を調べてみましょう。
二つのピースをどちらも含み、いま対立しているように見える部分を統合していくにはどんな、より高い共通の目的があればいいのでしょうか。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.176
2.対立とは、「正しさ」をめぐる争い
今日のテーマは、「主導権争いの解消」とでもいえるでしょうか。
誰でも陥りやすい、「主導権争い」。
自分でなんでもやろうとする、頑張り屋さんほど、陥りやすいものです。
そんな「主導権争い」を解消する見方について、考えてみます。
自立の象徴、主導権争い
誰かと対立するのは、「主導権争い」の一部といえます。
この「主導権争い」とは、「自立」マインドの象徴でもあります。
人の心は、「依存」から「自立」へと成長していきます。
「依存」とは、自分では何もできないと感じ、相手によりかかっている状態です。
相手に、常に何かしてほしい、と請求書を発行し続けている状態ともいえます。
それは、いつも相手の動向に左右される状態でもありますので、しんどいものです。
そこから、人は「なんでも自分でやろう」としていきます。
「依存」から「自立」へ移り変わるプロセスですね。
「自立」のステージにいたると、人はなんでも自分でするようになる反面、とても思考的になり、感情を感じることが難しくなります。
そして、人に頼れない、弱みを見せられない、という状態に陥ります。
だって、自分の弱さを見せたら、またあの辛い「依存」時代に逆戻りしてしまうような気がするのですから…
だから、「正しさ」に強くこだわるようになります。
言ってみれば、「正しさ」とは、自分の弱さを隠す鎧のようなものかもしれません。
この「正しさ」がぶつかるのが、「主導権争い」と呼ばれるものです。
「どちらが正しいか?」で、争うわけですね。
そして、これが苦しいところですが、「正しさ」で相手を服従させたとしても、満たされることはありません。
「正しさ」を押し付けられた相手は、どんどんその人らしさを失っていきます。
「正しさ」を押し付けた自分も、相手に無理強いしたという罪悪感に、苛まれます。
ほんと、「正しさ」を押し通しても、いいことはないようです。
「正しさ」と聞くと、すごくいいことのように聞こえます。
私たちが学校でずっとしてきたテストでも、正解を求められるわけですから。
しかし、心理学においては、いい意味で使われることは少ないようです。
「正しさ」は、分断を生むクセ者
「正しさ」は、クセ者です。
十人いれば、十通りの「正しさ」があるわけですから。
この「正しさ」を軸にしてしまうと、なかなか、人と交わることが難しくなります。
自分が「正しい」ということは、相手は「間違っている」わけです。
「正しさ」にこだわるということは、自分と相手との間に、はっきりとした線を引くことです。
それは分断であり、分離です。
なかなか、「間違っている」とラベルを貼ってくる相手と、一緒にいたいとは思わないですよね。
「だって私、間違ったこと言ってないですから!」
以前の私は、よく仕事でそんなことを言って怒っていました。
それは、自分から線を引いて、周りを拒絶していたんですよね…
これが、「自立」のしんどさですよね。
ほんとは助けてほしいのに、自分から離れてしまう…えぇ、しんどいですよね。
…と、私情がかなり入ってしまい、話がそれました笑
相手との間に、何らかの対立があったとき。
それは、「正しさ」を争っている、と見ることができます。
言い換えれば、「正しさ」とは、分断や分離を生む、クセ者ともいえるようです。
3.あなたもわたしも、パズルの一ピース
「正しさ」、「自立」をゆるめるためには
さて、相手との対立の根底には、「正しさ」の争いがある。
そうすると、対立を解消するためには、そもそもの「正しさ」にこだわる原因である「自立」をゆるめるアプローチがあります。
私たちの心の成長プロセスである、「自立」の次のステップ、「相互依存」を目指すアプローチです。
すなわち、「自分でできることは、自分でする。自分ができないことは、相手に頼る」という、Win-Winの関係を育むマインドです。
そこでは、頼る、手放す、委ねる、弱さを認める、お願いする、サレンダーする…といったことが、キーワードになってくるのでしょう。
いままで、自分だけでしていたことを、周りとしましょう、と。
はい。
頭ではわかるんですが、なかなか難しいものですよね。
ええ、とてもよくわかります笑
だって、いままで一人で弱音も吐かずに頑張ってきたのに、真逆のことをしよう、というのですから。
それはそれは、「清水の舞台から飛び降りる」くらいの抵抗があって、当たり前だと思います。
でも、難しい…
今日のテーマは、そうしたときに、少し違ったアプローチを示してくれます。
はい、ようやく本題にたどり着きました。
長いですね、前振りが笑
あなたも私も、パズルのピースだとしたら
今日の引用文では、対立を解消するために、「正しさ」をゆるめるためには、「共通の目的を持つこと」を提案しています。
どんな対立も、より高い共通の目的がなければ、すぐに主導権争いへと転落してしまいます。
この一文を、逆から見ると、「共通の目的があれば、主導権争いにならない」わけです。
少年マンガなどで、強敵が出てきたら、それまで戦っていたライバルと手を組むような、そんなイメージでしょうか笑
目の前の相手と、どんな関係でいたいのか。
この人と、どんな関係を築いていきたいのか。
そしてこの関係で、成し遂げたいことは、何なのか。
そうしたことにフォーカスしてみると、「正しさ」へのこだわりが、少し緩みます。
もちろん、なかなか争いの渦中にいるときは、そう考えるのは難しいものですけれどね。
そんなときは、人に話してみたり、カウンセリングを受けてみたり、一人で考えないことが大切です。
どこか、私たちは「正しい」ことは一つだ、という思い込みも、あるのかもしれません。
マーク式のテストならいざしらず、「正しさ」はいくつもあっていいはずです。
でも、二人のどちらかの見方も、パズルを完成させるために必要な一ピースだということがわかれば、いっしょにもっとすばらしいものを創造することができるのです。
この表現が、ほんとうに素敵ですよね。
私たちは、一人です。
けれど、全体を完成させるピースの、大切な一つでもあります。
その形だから、ぴったりとはまるのかもしれない。
そう見ることができたら、対立も、正しさも、少し違って見えてくるようです。
今日は、「主導権争い」をゆるめる、一つの見方をご紹介しました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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