自分でなんでもしようとするのは、「自立」の心理です。
しかし、自分で選んでいないものも受け入れようとすると、それ以上に素晴らしい恩恵が与えられたりするものです。
1.選んでいないものを受け入れる覚悟
先日の記事では、自分では選んでいないものを受け入れること、というテーマでお伝えしました。
自ら選んでいないものを受け入れることで、私たちは自立を手放していくことができる。 - 大嵜直人のブログ
私たちの心は、「依存」から「自立」へと成長していきます。
「依存」の状態は、誰かになんとかしてほしい、という状態です。
自分の力を信じることができず、自分には価値がないと思っている状態ともいえますね。
それゆえ、自分が何かを選択する場面においても「誰か選んで」となったり、自分が望まない結果になると「だってあの人がそう言ったから」と他責思考になったりします。
自分では選べない状態。
たとえ選んだとしても、それに責任を持つことが難しい状態。
それが、「依存」の状態です。
この「依存」は、お察しの通り、常に誰かに振り回される状態であり、主体性が持てずにしんどいものです。
それゆえ、「もう、誰かに頼ることなんてしない!」とばかりに、自分でなんでもしようとし始めます。
これが、「自立」へのプロセスです。
「自立」の状態になると、誰かをあてにしたりせず、なんでも自分一人で処理しようとするようになります。
これは、良い見方をすれば「自分の足で立つ」ことともいえます。
自分で選んだことに対しても、責任を持とうとします。
しかし裏を返せば、すべて自分でコントロールしようとしすぎるため、常に孤立や孤独と背中合わせになってしまう面もあります。
人の心の成長は「自立」で終わりではなく、その先に「相互依存」という状態があります。
これは、自分でできることは自分でする、自分でできないことは他人を頼る、という世界です。
先日の記事では、「自分で選んでいないもの」を受け入れることが、その「相互依存」の扉を開くヒントになるのではないか、というテーマでお伝えしました。
自分で選んでもいないもの。
それを受け入れる覚悟は、私たちの心を実に深く成熟させてくれるものです。
2.何ひとつ選ばずに生まれてくる不条理
私たちは、生まれてくるときに、何一つ選んでくることができません。
生まれる時代、国や地域、家族、容姿や資質…
こうしたものは、何一つ選ぶことができません。
深いところでは、「すべて自分で選んでいる」という見方もあるのでしょうけれども、ここではその見方はちょっと置いておきます。
そうしたものを、「自分は選んでいないのに」と嘆き、だからうまくいかないんだと考えるのが、「依存」の状態です。
これに対して、「それらは選べなくても、自分の力でなんとかできる部分がある」と考えるのが、「自立」の状態です。
これ、すっぱりと完全に分かれるわけでもなくて、この部分は「依存」的だけど、この部分は「自立」寄り、みたいな、まだら模様になっているものです。
容姿や資質は、自分で努力できる部分がある!と思えるけれど、家庭環境に関しては、どうしようもないじゃない…としか思えなかったり。
そんな風に、グラデーションになっているのが、人の心だったりします。
もちろん、それがいいも、悪いもありません。
ただ、自分がどの状態なのかを知ることは、とても大切なことです。
「依存」的な状態であれば、自分の価値を信じる、自分でやってみる、自分で動いてみる、というはたらきが必要ですし、
逆に「自立」的な部分があれば、それをゆるめることが必要になってくるのでしょう。
そこでヒントになるのが、先ほど出てきた「自分で選んでいないものを受け入れる」という覚悟です。
3.閉じた世界を開くために
考えてみれば、「自分一人の力で何とかなる」ことなど、どれくらいあるのでしょうか。
「自立」に触れすぎると、「自分一人だけしか、できる人がいない」という、閉じた世界に入り込んでしまいます。
家事や育児、仕事でこの状態に陥ってしまうことは、実によくある話です。
もちろん、自分自身が何かできることは、素晴らしいことです。
それができるまでに、いろんな苦労や努力があったのでしょうから。
それらを否定することは、全く必要ありません。
けれども、それを「自分一人だけで」していると考えなくても、いいのではないでしょうか。
そもそも、努力できるのは、その環境があってこそなわけです。
それは、自分が選んだわけでもないけれど、与えられていたものだったりします。
「自分で選んだものにしか責任を持たない」というスタンスでいると、こうした恩恵を受け取り損ねてしまいかねません。
「自分で選んでいないものだとしても、受け入れる」覚悟と、「自分が想像している以上の恩恵を受けとる」ことは、表裏一体なわけです。
そうして与えられているものに気づいていくと、「自立」によって閉じてしまった世界を、再び開いていくことができます。
それは、「依存」時代のように、「私はできないから、あなたがやって」という関わり方とは、違った形でつながりをつくれるようになるのです。
繰り返しになりますが、「自立」するのが悪いことでも、なんでもありません。
逆に、よくそこまで頑張ってきましたよね、という言葉をかけてあげることが大切です。
これからは、「あなたが」「わたしが」という世界から、「わたしたちが」という世界を開いていくことが、きっとできます。
そこでは、自分一人だけで得るものよりも、はるかに大きな恩恵を受けとることができるのです。
今日は、選んでいないものを受け入れる覚悟、というテーマでお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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