ずいぶんと気温が高くなり、蒸すようになった。
また暑い夏が近づいてきたことを実感する。
前日には、久しぶりに梅雨らしい雨が降った。
ふと以前から定点観測を続けている広葉樹に目が行った。
梅雨の合間の陽の光に照らされて、小さな青い実が、輝いていた。
ほんの少し前には、新緑の空に向かって新芽を伸ばしていたことに感動したのだが、いつのまにか時は流れて、新しい時間になっていたようだった。
この小さな可愛い生命のかけらは、いつ実るのだろか。
ぼんやりとそんなことを考えながら、雲の多い空を眺めていた。
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いつだって、彼らはことわりを教えてくれる。
個々の点に目を移せば、どの点でも不完全で、途上で、未完だ。
それでも、彼らが不完全か?と問われると、そうではない、と思う。
完全なサイクルの中に、いつもいる。
神様の意志なのか、宇宙を動かす物理法則なのか、仏様の恩寵なのか、この星の意志なのか、分からないけれど、何か大きな力に乗せられて、その船は河口へとゆっくり流れていくようだ。
その流れに、ただただ揺蕩っている。
いつも私は、
新芽が出ていない、とか
まだ実が青い、とか
葉が大きくならない、とか
実が落ちてしまった、とか
葉が落ちて枯れてしまった、とか…
ある一瞬をとらえては、不完全さを嘆く。
されど、これほど完全に動いている船もないだろうに。
いや、もしかしたら、完全であることを知っているからこそ、不完全さを嘆いて戯れることができるのかもしれない。
不完全なままでこそ。