少し前まで、夜中も暑くてクーラー全開だったのに、いつのまにか朝晩の風は涼しく、クーラーなしで過ごせるようになった。
秋の訪いというのは、静かに、それでいて確実に訪れるようだ。
一日、一日を過ごしていると見落としてしまうが、ふと立ち止まると、その変化の早さに驚く。
日ごとに空は澄んでいくようで、もう夏のあの入道雲と濃い青色をした空は、どこにもない。
夜空も同じで、秋の夜空はどこか澄んで、観る者の心を惹きつけてやまない。
昨日は中秋の名月だった。
朝は小雨がぱらついていたりして厚い雲が空を覆っていたため、今年は名月が観られないかな、と思っていたが、午後から晴れ間が見えてきて、夜には少し雲がかかっているくらいまでになった。
ありがたい限りである。
千年の昔から、愛でられてきた秋の名月。
燃え盛っているようで、それでいて静かな諦念が見えるようで。
観ていて飽きない。
夏の終わりはいつも寂しく悲しいが、それを癒してくれているようだ。
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そんな月を見上げながら、刈谷市にある「魚屋ごんべえ」さんを訪れた。
秋鮭の南蛮漬け。
酸味が、じわじわと身体の深いところに沁みていくようで、美味い。
旨味の詰まった秋鮭の身と皮、そして玉ねぎの爽やかさとの相性がとてもいい。
酸味は、疲れているときに身体が欲する。
この時期、朝晩涼しくなってきて過ごしやすくなるのだが、身体は夏の暑さの疲れが出てきやすくなることが多いと聞く。
秋雨が続いたり、天候が不順になりやすいのもこの時期だ。
まして、今週は執筆依頼を仕上げて、張りつめていたものが緩んだのもある。
そんな身体と心に、沁みる味だった。
定番の鯖と豚汁定食。
肉厚の鯖は、相変わらず絶品の焼き加減でたまらない。
具だくさんの野菜のうまみがたまらない豚汁を啜りながら、ふぅと一息つく。
もう秋なんだと、あらためて感じる夜。