自分の周りに、対立があるとき。
それを癒すための一つの方法は、直接その争いにアプローチするのではなく、自分の内面と向き合い、そこにある対立を癒すことです。
心理学に置いて最も重要ともいえる、「投影」の概念とあわせて、お伝えします。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.対立を終わらせるには、まず内面からそれを変えること
表面にあらわれた対立関係を癒すもっとも簡単な方法は、自分の内側に入っていくことです。
私たちの意識のなかで対立して闘っている部分を見つけ、その対立がはじまったところまで時間を戻し、過去のシーンを変えます。
それでも外側の対立が解消されなければ、あなたの内面にさら深い対立をかかえているということです。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.103
2.外側の世界は、内面の「投影」である
心理学の深淵、「許し」と「投影」
今日のテーマは「投影」になるでしょうか。
「投影」とは、自分の心の内面を、外の世界に映し出すことです。
心理学において、最も重要かつ、最も気づきにくいテーマの一つです。
前に書いたような気もしますが、私がカウンセリングを学んだ根本裕幸師匠は、「『許し』と『投影』だけ理解しておけば、あとは何とでもなるでー」と仰っておられました。
「ふーん、そんなものか」と思って聞いていましたが、その二つの概念はほんとうに深く、完全に理解するなんて、生きているうちには無理のような気もします笑
「許し」は、言葉で説明することはできたとしても、それを自分ごととして理解して、許していく道は、おそらく一生続くのでしょう。
不俱戴天の、絶対に許せない、そんな相手に対しての強い想いが緩んだとき、人生が変わって見えます。
それを続けることが、難しいんですよね、ほんとうに。
日々感情は移ろいゆきますし、なかなかその桃源郷にはいられないのが、業の深い私たちなのかもしれません笑
「投影」も、そうですね。
その理論をなんとなく理解することはできても、自分の色眼鏡を外すことは、なかなか難しいものです。
ただ、それくらい重要で、かつすべてのことに活かせるテーマだとも思います。
「投影」の3つのパターン
「投影」とは、自分の心の内面を、外の世界に映し出すということです。
言葉にすると、それだけなのですが、これを突き詰めていくと、「世界のすべては自分がつくっている」、「わたしは世界の創造主」と考えることもできます。
どのレベルで考えるかにもよりますが、ここでは「投影」の基本的な3つのパターンをご紹介します。
1.自分の感情を人やものに「投影」する
これは、わかりやすいかもしれません。
人の感情は、日々移ろいゆくものです。
同じ景色を見ても、人それぞれ、感じるものが違います。
そして、人は自分の感情を、周りの人やものに映し出します。
同じ夕焼けを見たとしても、
「あぁ、なんて美しい色の夕焼けなんだろう。世界は今日も美しい」
と感じる人もいれば、
「なんだか、寂しそうな色だな。別れを想像してしまうな」
と思う人もいるでしょうし、
「あぁ、今日も一日が終わってしまった。まだやりたいことの半分も終わっていない」
という人もいるでしょう。
それぞれの人が、夕日という同じ風景に、自分の心の内面を「投影」して、まったく違う見方をしている、という見方です。
2.過去の経験や出会った人を、違う人やものに「投影」する
私たちは、生きる中でたくさんの人と出会い、たくさんの経験を重ねていきます。
その中で、過去に出会った印象的だった人や出来事を、いま目の前の人に映し出すのが、ふたつめの「投影」のパターンです。
影響が強かったりした人ほど、「投影」しやすくなります。
パートナーシップの場面では、非常にこれがよくあります。
パートナーを、パートナーその人として見るのではなく、自分の親を「投影」してしまう。
そうすると、親にしてほしかったことを、パートナーに求めてしまいがちになります。
また、親に対して抱いていた感情を、パートナーに対しての感情と混同してしまうこともあります。
目の前のその人、そのままに見ることができなくなるわけです。
そうすると、なかなか円滑なコミュニケーションが取りづらくなったり、自分が何に対して苦しいのかが、見えづらくなったりします。
3.自分の価値観や考えを、「投影」する
これは、一番自分では気づきにくいパターンかもしれません。
誰しもが、自分の価値観を持っています。
この価値観を、観念、思い込み、ビリーフ、自分ルールなどと表現したりもします。
「西のお山に雲がかかったら、明日は雨が降る」という思い込みから、「どうせ自分は誰からも愛されない」というものまで、無数にあると思います。
そのような蛍自分の価値観を、周りの人に映し出すわけです。
「自分は誰からも愛されない」という価値観を持っていたら、それを周りの人に「投影」します。
どれだけ周りの人が愛を差し向けてきても、受け取れないわけです。
最も大きな問題は、その当人が自分の価値観に気付いていないことなのでしょう。
自分が色眼鏡をかけていることに気付くのは、大変難しいものです。
ただ逆を言えば、外側の世界を見ると、いま自分がどんな価値観を持っているのかを、知ることができるとも言えます。
つまり、自分の周りの人たちが、いがみ合ったり、争い合っていたりするならば、自分の内面のどこかに癒されていない、葛藤がいるのだ、というように。
かくも「投影」とは深く、また根源的なテーマであり、それだけに「投影」と向き合うことは、大きな恩恵を与えてくれるようです。
以上、「投影」の3つのパターンを見てきましたが、いずれのパターンにも共通するのは、「自分の心の内面を、外側の世界に映し出す」という点だと思います。
3.外側の対立関係を癒すためには、内側から
「インサイド・アウト」、まずは自分の内面から
さて、この「投影」の法則を、逆から見ると、「自分の内側を変えることができれば、周りが変わる」ということになります。
誰かを変えようとする試みは、ほぼ失敗に終わります。
相手を変えようとするならば、まず自分から。
これは、パートナーシップの世界でも、コーチングの世界でも、よく言われることです。
あるいは、ベストセラーのスティーヴン・R・コヴィー博士の「7つの習慣」においても、「インサイド・アウト」という原則で説明されています。
コヴィー博士は「インサイド・アウト」を、「自分の外部に原因や責任を求めるのではなく、自分の内面にあるものを変えることで、外にあるものを良くしていくこと」としています。
その原則も、見方を変えれば、「投影」の法則から説明できるのだと思います。
今日の引用文にある通り、「外側に見える対立関係を癒したいと思うのであれば、自分の内面を癒すことから」ということになります。
自分が変えたい相手や状況に、直接アプローチすることが、手っ取り早く見えるのですが、そうではない、と。
自分の内面を癒していくことが、唯一の道であるようです。
相手を変えようとするのではなく、自分の見方を変える
ただ表現として難しいと感じるのは、「相手を変えるために、自分の内面と向き合う」というのは、少し本質とは離れているような気もします。
このあたり、非常に繊細な部分で、難しいのですが。
たとえば、誰かとの関係性をよくしたいと思っている中で、「相手を変えるためには、まず自分から」ということを聞いたとします。
「これはいい!」と思って、自分の内面と向き合うことを始めます。
そこで思うような結果が得られないと、「これだけ私は変わったんだから、あなたも変わりなさいよ!」という想いを抱いてしまいがちです。
そんなメッセージを、言外からヒシヒシと送っていたら、なかなか相手は近寄りたくなくなっちゃいますよね。
えぇ、安心してください。私もずいぶんと、その罠にはまってきましたので笑
相手を変えることは、単に結果に過ぎず、それを目標にするのは、あまりうまくいかないようです。
そうではなくて、自分の内面と向き合い、自分のなかの葛藤が癒されることによって、「自分の」世界の見方が変わっていく。
そうすることで、相手への接し方や関わり方が変わっていく。
その結果として、相手と自分の関係性が変わっていく。
あくまで変わるのは相手ではなく、自分の見方であり、その変わった自分と相手との関係性なのだと思います。
ただ、もちろん、目標がどうあれ、自分の内面と向き合おうとすることは、何よりも素晴らしいことだと思います。
そのあたりの、バランスというかが、なかなか難しいところではありますが。
とはいえ、「投影」は非常に大切なテーマなので、また折に触れて、書いていきたいと思います。
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