大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

熊野をめぐる「英雄の旅」

どんな映画にも、それをつくった映画監督であったりクリエイターの意図がスクリーンに反映されます。
そこに無駄なものは書き込まないはずです。

同じように私たちの身の回りで起こることも、全てが私たちの深い意識が真っ白なキャンバスに描いている作品のかもしれません。

熊野に呼ばれたお話を、久しぶりに「英雄の旅」のお話とあわせて綴ってみたいと思います。

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2週間くらい前に、ふと熊野に行きたいと思った。世界遺産の熊野古道を、一度歩いてみたい、と。

しかし名古屋からは結構な距離があり、運転大丈夫かな、お金かかるよね、帰りも遅くなるよね、などなど抵抗が出てきてやきもきしていた。

しかし、不思議なことにそれから熊野を連想させる出来事が何度も起きた。

ふとつけたテレビのニュースで、熊野大社のことが出てきたり、

Facebookのタイムラインに、美しい写真を撮る友人が撮った八咫烏のポストが流れてきたり、

新しく知り合った友人に、そのニックネームの由来を聞いたら「八咫烏」だったり。

それはシンクロなのかもしれないし、何かのサインなのかもしれないし、人は自らの意識がフォーカスしているものを、世界から切り取って認識するという話から説明できるのかもしれない。

それは私には分からないが、とりあえず思い立った私は熊野本宮大社に向かうことにした。

その道中も、抵抗はものすごくて出てきた。

ほとんど周りに車もない道に、周りはまるでシシ神さまでも出てきそうな「リアルもののけ姫」のような深い森に霧がかかっている。
「火葬場」や「墓地」の文字が目に留まったり、「轢かれた動物の遺体」に世のはかなさを覚えたり。

なんでこんなところにわざわざ一人できてしまったんだ、と後悔して帰りたくなってきた。

しかし、国道311号に入って走っていたところ、格子状のトンネルを抜けたときに、思いがけず記憶が蘇った。

「私はこの道を通ったことが、ある」

忘れるくらいに小さかった頃に、おそらく親に連れられて。こんなにも遠くまで。

海沿いだと思っていた格子状のトンネルの道の記憶は、実は熊野川沿いの道だったのだ。

思いがけず見つかった親の愛に、しばし落涙した。

何のことはない。
ただ気づくだけだったのだ。

行ってみたかった熊野古道も、実は来たことがあったのだ。

夢は叶わないのではなく、すでに叶っていた。

愛は与えるでも足りないでも受け取るでも枯れるでもなく、ただそこにあったのだ。

「蘇生の森」熊野古道と熊野大権現は、その名の通りに忘れていた愛をまた蘇らせてくれた。

ありがとう、八咫烏。
また来るよ。

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2018.3.18(2018.3.19加筆)

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不思議なことがたくさん起きて熊野に呼ばれて、やはり行くべきところだったんだ、といま一人納得しております。

以前、こちらでジョゼフ・キャンベルの「英雄の旅」についてのお話を書きました。

季節のめぐりと英雄の旅 - 大嵜 直人のブログ

キャンベルは、世界各地の神話や伝承には共通する物語の原型があることを見出し、その原型をキャンベルは「英雄の旅」と呼びました。

「英雄の旅」は大きく分けて8つのステージに分かれ、多くの物語や映画がその大枠を参考にしているとされます。

 

1.Calling(天命) : 
主人公は何かに呼ばれたり、身の回りで大きな出来事が起きます。

2.Commitment(旅の始まり) :
そこから何らかの決意を胸に秘め、旅に出ることを決意します。

3.Threshold(境界線) :
Thresholdとは、敷居のこと。主人公は自分の設定した境界を超える何かで試されます。

4.Guardians(メンター) :
読んで字のごとく、主人公は旅の中で師となるメンターに出会います。

5.Demon(悪魔) :
最も手ごわい悪魔が立ちはだかります。それは強力な怪物かもしれませんし、あるいは癒せない過去だったり、許せない弱い自分だったりするのかもしれません。

6.Transformation(変容) :
やがて、主人公は今までの自分を越えて大きく変容するタイミングが来ます。

7.Complete the task(課題完了) :
主人公はさまざまなものの力を借りながら、ついに旅に出た目的を果たします。

8.Return home(故郷へ帰る) :
旅の恩恵を手に、故郷へ帰還します。それは金銀財宝かもしれませんし、新たな知識かもしれませんし、あるいは自分の弱さを認められる強い心なのかもしれません。帰還した主人公は王国を築きますが、それはまた新たなCallingの序曲で・・・

 

この「英雄の旅」は、私が大好きなドラクエ4も「英雄の旅」に当てはまる部分が多いように思えるように、たくさんの物語や映画がこの影響を受けているようです。

人生が旅にたとえられるように、私たちの人生もキャンベルの言う「英雄の旅」の繰り返しのようです。

今回の私の旅もまた、「英雄の旅」そのものでした。

「Calling」はいろんなシンクロやサイン。
「Threshold」は長距離運転が苦手という境界線。
「Guardians」はアドバイスをくれた地元の友人。
「Demon」は旅の途中の孤独感。
そしてただそこにあった愛に気づくという恩恵を持って、「Return home」となりました。

やはり、旅はいいものだと再認識しました。

そして、旅の始まりは「Calling」。
自分が「呼ばれている」ことを認識できるように、心を開いて世界を見つめることが大切なんだな、と思うのです。

 

今日もお越し頂きまして、ありがとうございました。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。