大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

良質なコミュニケーションのための3ステップ

人の悩みの多くは、人間関係に起因します。
そして人間関係を円滑にするのも、はたまた錆びついたものにするのも、コミュニケーションの質に依ります。

コミュニケーションと一口に言っても、その相手が一人の場合もあれば複数の場合もあります。
また家族や恋人、友人のようにパーソナルな関係から、会社の同僚や仕事の取引先のようにビジネスでの関係まであります。

今日お話ししたいのは、そのいずれの場合でも良質なコミュニケーションを取るためのベースとなる3つのステップについてです。

コミュニケーションで目指すべきところは1.なのですが、やっていることの順番としては3→2→1のようになると思います。

順を追ってお話ししていきたいと思います。

1.自分の感じている感情を素直に伝える

コミュニケーションがうまくいってないと感じるとき、それは「話し手の伝えたいこと」と「聞き手が受け取ったこと」の間にギャップがある場合が多いです。

それは、コミュニケーションにおいては、「何を言ったか?、何を伝えたか?」ではなく「何が伝わったか?」が重要だからです。

このあたり「言った言わない」「数字」「具体例」などといった「事実」を重んじる男性にとっては耳の痛い話ですね、はい。

この「何が伝わったか?」の部分は、「言動や行動」ではなく「意識や感情」といった部分が相手に伝わります。
同じ相手に同じ内容を伝えるとしても、伝える側の持っている「意識や感情」が違えば伝わり方は全く違ってきます。

そしてコミュニケーションがこじれるのは、その「意識や感情」と表面的な「言動や行動」が一致していない場合です。

たとえばデートで食事に行くときに彼女が「何を食べに行く?」という問いかけに対して、彼氏が「何でもいいよー」と
答えたとします。

このとき、「何でもいいよ」の中身が、

「彼女と食事するなら何を食べてても楽しいから、何でもいいなぁ」なのか、

「今日はダルくて考えるのめんどくせーから、何でもいいわ」なのか、

によって伝わるものは大きく違いますよね。

特に女性はこのあたり敏感ですからね、ええ・・・

さて、その前提でいくなら、「自分の感じている感情を素直に伝える」ことが最もコミュニケーションを円滑にすることのできる一つの手段だと思います。

先ほどの後者の例でも、「ごめん、実はあんまり体調が良くなくて、考えるのが億劫だから、今日は決めてもらっていい?」と伝えるのでは、ずいぶんと伝わり方も変わるのではないでしょうか。

それでは、なぜ「意識や感情」と表面的な「言動や行動」がズレてしまうのでしょうか。

それは、相手に対して言いたいことを我慢や遠慮してしまうからですね。

「せっかくのデートなのに体調悪いって言ったら、申し訳ないな」
「こんなことを言ったら、相手に嫌われてしまうかな」
「自分のことなんて、きっと話しても理解されないよな」
「ほんとに感じたことを伝えて、理解されなかったらどうしよう」

だから、ほんとうに言いたいことを我慢してしまう。
でも、表面上の「言動や行動」は取り繕っても、奥底にあるそんな我慢や遠慮といった「意識や感情」を相手は敏感にキャッチします。家族やパートナーといった、近い間柄ほど、そうなりがちです。

けれども、先ほどの例ではないですが、自分の感じていることを相手に伝えることはコミュニケーションの一歩目です。

せっかくのデートでも体調が悪いんだと伝えることができたら、次は相手の番です。

「うーん、久しぶりだから残念だけど、今日は家でゆっくりしようか?」なのか、
「えー?今日はもう焼肉のお腹になっちゃったから、食べなくていいから付き合ってよ」なのか、
「体調管理もできないオトコなんて、サイテー!」なのか、

それは分かりません。

けれど、そこからキャッチボールが始まるわけです。

その出発点を我慢や遠慮でズレてしまうと、あとは時間が経つほどズレが大きくなっていきます。

このあたり、感覚的にはお分かり頂けるのではないでしょうか。

少しだけ補足なのですが、「意識や感情」を伝えるとは書きましたが、「怒り」を相手にぶつけるのは得策ではありません。

なぜか?「怒り」は「感情」ではないからです。これについては、また日を改めてまとめたいと思います。

2.日常の細部を見つめる、勇気を出す

コミュニケーションを円滑にするためには、自分の「感情」を伝えることが大切。

それをするためには、まず自分の感じていることに耳を傾けないといけないですよね。

自分が何を感じているかがよく分からない、そんなお客さまは、ここでよく申しあげております「日常の細部を見つめる」ことをしてみてはいかがでしょうか。

少し立ち止まって空を見上げてみる。
どんな空と雲が浮かんでいるでしょうか。

少しゆっくりと噛んで夕食を食べてみる。
どんな味と触感がして、何を感じるでしょうか。

何もせずにコーヒーを飲むことだけをしてみる。
どんな香りと、苦みが広がっていくでしょうか。

そんなことを意識的にしていると、自分の感じている感情に対して少しずつ開いて敏感になっていきます。

いま、何を感じている?
そんな問いを、自分の後頭部の少し上の方から問いかけてみることもまた有効ですね。

さて、そんなことを重ねていると少しずつ自分の感じていることに開いていきますが、自分の感じていることを素直に相手に伝えることは、人によってはものすごく怖く感じます。

これが、一番難しいのですよね。

「感じていることを伝えて、嫌われたらどうしよう」

そんな強い怖れが出てきます。

この怖れは、過去に自分の感じていることを伝えたのに受け入れてもらえなかった、という経験がある人は特に強く出てきます。

両親、家族、親友、恋人、パートナー・・・そんな近しい人から、拒絶された記憶があると、どうしても「感じていることを素直に出す自分」よりは「受け入れられやすい自分」を演じてしまいます。

しかし、その「受け入れられやすい自分」を演じれば演じるほど、本来の自分からは離れていくためにしんどくなります。

そして何よりその「受け入れられやすい自分」ほど、実は「自分が受け入れられやすいと思っているだけで、相手にとってはそうでもない」のです。

だって「言動や行動」と「意識や感情」が一致していない人は、どちらを信用したらいいのか分からないですし、不審ですよね。

だから、ほんの少し勇気を持ってルビコン川を渡り、「自分の感情を伝える」ことにチャレンジしてみると、大きくコミュニケーションの質が変わるのです。

「ごめん、ほんとはこう思っていたんだ」

そのほんの少しの勇気が、コミュニケーションの質を変え、人間関係を変え、環境を変え、世界を変え、人生を変えることができます。

さて、ではその「ほんの少しの勇気」を出すためには、どうしたらいいのでしょうか。

いつもに増して話の長い今日の割烹おおさきですが、いよいよ次が最後の項です。

3.自分の存在を肯定する

「ほんの少しの勇気」とは、立ち止まった状態から一歩踏み出す「行為」です。

「行為」とは、なにかをする、伝えるといった行動力や決断力、推進力と言い換えられます。

そして、こうした一歩踏み出す行動力を支えるのは、「存在」の部分です。

少し抽象的になってしまいました。

えっと、言い換えると、

「これができたから、あなたは素晴らしいね」という「行為の肯定」ではなく、

「成功しても失敗しても、あなた自身の素晴らしさは変わらない」という「存在の肯定」です。

何かができるから素晴らしいという「行為の肯定」は、失敗の怖れを生みます。

しかし、結果がどうあってもあなたの価値は変わらず素晴らしい、という「存在の肯定」は一歩踏み出す勇気を与えてくれます。

言い換えるなら自分で自分の存在を肯定する、ということです。

ようやく、良質なコミュニケーションの最も根源にたどり着きました。

何があっても大丈夫。私には私がついている。

そう思えることができたなら、胸を張ってルビコン川を渡ることができるでしょう。

そして、そこでは怖れていたような悪いことは起きないのでしょう。

夜明け前が一番暗い。
けれど明けてしまえば何ともないように、ルビコン川も、渡ってしまえば何ほどのこともないのです。

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いかがでしたでしょうか。
良質なコミュニケーションのための3ステップ、お客さまのご参考になれば幸いです。今日もお越し頂き、ありがとうございました。
どうぞごゆっくりお過ごしください。