大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

初夏の雨に輝く、新マイル王の末脚。 ~2023年 NHKマイルカップ 回顧

1.レース・出走馬概要

初夏の東京競馬場のGⅠ5連戦の開幕を飾る、NHKマイルカップ。

スピードの絶対値と底力が問われる、府中のマイルを舞台に3歳世代マイル王を決める一戦。

過去には海外GⅠを制した名馬や、ここからダービーを連勝した優駿の名が並ぶが、直近は距離適性を重視してダービーとの使い分けが主になってきた感がある。

今年も快速自慢の3歳が揃った。

 

昨年の最優秀2歳牡馬、ドルチェモア(牡3、栗東・須貝尚介厩舎)。

12月のGⅠ朝日杯FSを、好位から抜け出す隙のない競馬で勝ち切った。前走のGⅡニュージーランドTでは、デビュー戦以来となる逃げを打ったが、ペースも厳しく7着に崩れてしまったが、ここでの巻き返しなるか。鞍上は同馬に初騎乗となる三浦皇成騎手に乗り替わり。

 

そのニュージーランドTを制したのが、エエヤン(牡3、美浦・伊藤大士厩舎)。

未勝利から3連勝と、破竹の勢いで重賞まで制した。いずれも好位から抜け出す勝ち方で、レースセンスの高さをうかがわせる。新種牡馬として活躍中の父・シルバーステートに、初のGⅠタイトルを届けるか。鞍上は3走前に手綱を取った戸崎圭太騎手に乗り替わり。

 

皐月賞からの参戦は、ダノンタッチダウン(牡3、栗東・安田隆行厩舎)。

朝日杯FSから直行となった皐月賞では大きく崩れたが、そこからマイル戦に矛先を向けてきた。早くから大器と評されてきた同馬だが、マイルで戴冠となるか。安田隆行厩舎、ダノン、ピンク帽、そして川田将雅騎手とくれば、昨年の同レースの勝ち馬ダノンスコーピオンとまったく同じ。昨年の再現成るか。

 

重賞2勝の実績を持つのがオオバンブルマイ(牡3、栗東・吉村圭司厩舎)。

GⅡ京王杯2歳Sに続いて、今年のGⅢアーリントンCでも差し切り勝ちを飾った。7着に敗れた朝日杯FSでも、敗因は出遅れとはっきりしている。常に低評価を覆す走りを見せる同馬が、GⅠの舞台でも輝くか。鞍上は前走から引き続き武豊騎手。

 

来日以来、好調を維持するD.レーン騎手はカルロヴェローチェ(牡3、栗東・須貝尚介厩舎)に騎乗。

二頭出しの須貝厩舎の、もう一本の矢。前走、GⅢファルコンSでの好位から全馬中2位の上がりを繰り出しての2着から、GⅠ制覇を狙う。

 

その他にも、桜花賞組からシングザットソング(牝3、栗東・高野友和厩舎)、ファルコンSを制したタマモブラックタイ(牡3、栗東・角田晃一厩舎)なども虎視眈々。

有力馬の父を見ると、シルバーステート、デクラレーションオブウォー、ドゥラメンテ、ディスクリートキャットといった、新しい世代の種牡馬の名が並ぶ。

どの種牡馬の仔が、3歳マイル王に輝くのかも興味深いレースとなった。

2.レース概要

全国的な荒天の日曜日となり、東京競馬場も雨のなかでの開催。

馬場状態は直前の10レースから「良」から「稍重」に変更となった。

降りしきる雨のなか、ゲートが開く。

揃ったスタートから、セッション、オールパルフェが前をうかがうが、最内からフロムダスクが主張してハナへ。

前目にシングザットソング、その後ろにドルチェモアとタマモブラックタイ。

中団からダノンタッチダウンとカルロヴェローチェ。

オオバンブルマイ、ウンブライルは後方からの競馬。

前半の半マイルは46秒3と、馬場を考えると少し早めのペースか。

フロムダスクとオールパルフェが並んだまま、直線へ。

すぐにタマモブラックタイが先頭に替わり、それを外からダノンタッチダウンが交わしにかかる。

ワンテンポ遅らせて、その外からシャンパンカラー、そしてオオバンブルマイが迫り、4頭が横一線。

抜け出したのは、真ん中のシャンパンカラー。

追いすがるオオバンブルマイを、後ろからウンブライルが強襲。

しかし先頭は変わらず、シャンパンカラーが1着でゴール板を駆け抜けた。

勝ち時計は1分33秒8。

2着に最後に伸びてきたウンブライル、そして3着にオオバンブルマイが入った。

3.各馬戦評

1着、シャンパンカラー。

前走のニュージーランドTでは3着に敗れていたが、東京マイルでは2戦2勝と負けなし。適性の高さに加えて、渋る馬場も味方したか。

結果的には、掲示板に載った馬はすべて中団より後ろを進んだように、鞍上のペース判断も見事だった。

内田博幸騎手は、2018年のフェブラリーS以来となる、5年ぶりのGⅠ勝利となった。

大阪杯を武豊騎手が制するなど、今年はベテランの活躍が目立つ。

名手の手綱、なお健在を示す勝利となった。

父ドゥラメンテからは、また新たなGⅠ馬が誕生した。

スターズオンアース、タイトルホルダー、リバティアイランド、ドゥラエレーデ、そしてこのシャンパンカラーと、実に多彩な産駒を短期間に送り出してきた。

返す返すも、早世が惜しまれるが、遺された産駒のさらなる活躍を期待したい。

 

2着、ウンブライル。

ニュージーランドT2着から、当レース2着は地力の高さを示すもの。

前がかりのペースを想定してか、前を追いかけずに末脚に賭けた鞍上の騎乗も見事。

目標としていたと思われるオオバンブルマイは交わしたが、勝ち馬が前にいたといった様相か。

いずれにせよ、マイル戦での地力の高さは世代上位と思われる同馬、今後のレース選択を楽しみにしたい。

 

3着、オオバンブルマイ。

直線に向いたときは、「また武豊騎手が最年長GⅠ勝利記録を更新か」と思わされたほど、見せ場十分だった。

レジェンド・武豊騎手の手綱、まだまだここにあり。

前走、重馬場のアーリントンCを勝っているように、渋った馬場は苦にしないのだろう。

勝っても勝っても人気にならない同馬だが、今日は3番人気で堂々の3着。

引き続き、マイル路線での「大盤振る舞い」を楽しみにしたい。

 


 

初夏の雨に輝く、新マイル王の末脚。

2023年NHKマイルカップ、シャンパンカラーと内田博幸騎手が制した。

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