大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

砂塵に舞うゴドルフィン・ブルー。 ~2023年 フェブラリーステークス 回顧

1.レース・出走馬概要

まだ寒の戻りの厳しい、2月の半ば。

それでも季節はめぐるようで、今日から時候は「立春」から「雨水」へ。

競馬もまた、フェブラリーステークスが2023年のGⅠ戦線の開幕を告げる。

府中のダート1600mを舞台に、砂の猛者たちが今年初めてのGⅠタイトルを狙う。

当レース連覇中のカフェファラオ、昨年末の大一番・東京大賞典と年明けの川崎記念を連勝したウシュバテソーロ、昨年のチャンピオンズカップを制したジュンライトボルト、そのレースで1番人気に支持されたテーオーケインズが出走を回避。

近年、2月末のサウジカップがダート路線の選択肢となったこともあり、有力馬が分散する傾向は続くのだろうか。

 

そんな中、超新星として期待されたのが、5歳牡馬のレモンポップ。

1年前の条件戦から、破竹の4連勝。GⅢ武蔵野ステークスでは2着に惜敗も、前哨戦のGⅢ根岸ステークスを逃げ切ってここに望む。

200mの距離延長を克服し、如月の府中にゴドルフィン・ブルーが舞うか。

鞍上は戸崎圭太騎手から、昨年GⅠ2勝とブレイクした坂井瑠星騎手に乗り替わり。

 

その戸崎騎手が騎乗するのが、明け4歳のドライスタウト。

GⅠ全日本2歳優駿を制してから、昨年秋には同じ府中のオープン特別・霜月ステークスを押し切って勝利。

前走のすばるステークスでも2着に入っており、世代交代を告げるか。

 

そして史上初めて当レースに外国馬として参戦するのが、カナダのGⅠ馬・シャールズスパイト。

前走はGⅠブリーダーズカップ・マイルで2着に入っており、スピードの裏付けは十分。当レースの後、GⅠサウジカップへの転戦を目論むとの報道もあるが、府中で歴史を刻むか。

鞍上は、今年限りで引退を表明しているジョアン・モレイラ騎手。

 

同じく、この2月で騎手引退、調教師へ転身を表明している福永祐一騎手は、オーヴェルニュに騎乗。

来週がサウジアラビアでの騎乗のため、この日がJRA最後の騎乗となる。

去りゆく名手は、自らの手で引退に華を添えるか。

 

さらに、浦和競馬から挑むのがスピーディーキック。

前走・東京シンデレラマイルを快勝し、御神本訓史騎手とともに、この大舞台に挑む。

地方競馬からの参戦というと、1999年に当レースを制した岩手の雄・メイセイオペラが想起されるが、地方からの熱風を期待したい。

 

昨年のGⅠ帝王賞の覇者・メイショウハリオは、久々のマイル戦への参戦。

昨年末の東京大賞典では3着だったが、マイルは一昨年の5月以来となるが、距離短縮が奏功するか。

そして、リピーターの多い当レースとしては、昨年2着のテイエムサウスダンの巻き返しも怖い。

あるいは、レッドルゼルは前年の当レース6着、一昨年は4着と実績ありで、こちらも雪辱を期す。

 

府中のダート、マイルを舞台にした砂の一戦。

寒風を吹き飛ばすような熱線に期待がかかる。

2.レース概要

スタートでメイショウハリオが躓き大きく態勢を崩し、浜中俊騎手が振り落とされそうになるアクシデント。

メイショウハリオは最後方からの競馬を余儀なくされる。

内から好発を決めたが、レモンポップ。

それを外からショウナンナデシコが交わして先頭へ。

レモンポップは競らずにそれらを行かせる形で、ドライスタウトが並んで追走。

内目のやや後方からシャールズスパイト、その後ろにオーヴェルニュ。

スピーディーキック、レッドルゼル、そしてメイショウハリオらが最後方で脚を溜める展開。

直線を向いて、先頭のショウナンナデシコを、2列目にいたヘリオスとケイアイターコイズがかわしていく。

その外から迫る青い勝負服、レモンポップの坂井騎手の手綱は、まだ余力十分に見えた。

満を持して坂井騎手が追い出すと、残り200mで早くも先頭に立ち、抜け出すレモンポップ。

追い込んできたレッドルゼルが2番手に上がるが、2馬身ほどの差で脚色が同じになる。

さらに後ろからメイショウハリオが抜けてくるが、こちらもレッドルゼルまで届きそうにない。

勝利を確信した坂井騎手は、抜け出したレモンポップの手綱をゴール板の少し前で緩めた。

レモンポップ、1着。

2着には、追い込んだレッドルゼルがそのまま入り、3着にはメイショウハリオが入った。

レモンポップが、2023年最初のGⅠを制した。

3.各馬戦評

1着、レモンポップ。

完勝といえる勝利で、生涯連対率100%を堅持した。

抜群の手応えで、あそこまで追い出しを我慢させれば、距離延長も関係なしか。

ショウナンナデシコを含む、先行した他の馬が下位に沈む中、上位にきたのはレモンポップのみという結果となった。

これを他の先行馬の力不足と見るか、レモンポップの力が抜けていたのか。

どちらの見立てが正しいのかは、次走以降でその真価が問われることになる。

そして何より、GⅠの舞台で乗り替わりで1番人気馬に騎乗した、坂井騎手の落ち着き払った手綱さばき。

「テンよし、中よし、終いよし」といった、文句のつけようがない騎乗。

勝利騎手インタビューで、戦前の構想どおりと答えていたが、それをこの大舞台で実現することが、どれほど難しいことか。

昨年、スタニングローズで初のGⅠを制し、さらに飛躍が期待される2023年。

「さあ、瑠星の時代です」

そう宣言するかのような、勝利だった。

 

2着、レッドルゼル。

出走馬概要でも触れたが、一昨年、昨年と当レースで着実な結果を出しているのは、やはり伊達ではなかった。

肚をくくって完全に終いに賭けた、川田将雅騎手の騎乗。

目を見張るような直線の末脚だったが、勝ち馬と同じ脚色に。

道中のポジションを含め、勝ち馬に完璧に乗られ過ぎた。

とはいえ、最大目標と思われる3月のドバイに向けて、期待の高まる2着となった。

 

3着、メイショウハリオ。

スタートの大きなアクシデントがありながら、よく追い込んでの3着。

思わず声が出るような大きな躓きに、浜名騎手はよく踏ん張って落ちなかった。

とはいえ、中間が緩んだラップといい、展開も向いた形で、内が混雑した分、大外を通ったことも結果的には良かったか。

何より、昨年の帝王賞を制した脚が戻ってきたことで、次走以降もまた楽しみになった。

 


 

寒風の中、砂塵に舞うゴドルフィン・ブルー。

坂井瑠星騎手の手綱捌きが、光った。

2,023年フェブラリーステークス、レモンポップが制した。

 

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