大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

春の嵐、ふたたび。 ~2022年 大阪杯 回顧

春の中距離王者決定戦、GⅠ大阪杯。

昨年の年度代表馬・エフフォーリア、その2022年の始動戦。

迎え撃つは、前哨戦のGⅡ金鯱賞を5連勝で制した、超新星・ジャックドール。

そして前年の覇者・レイパパレ、さらには前年のGⅠエリザベス女王杯を制しているアカイイト、前年の天皇賞・秋、香港カップと2000mの大舞台で強い競馬を見せたヒシイグアスが続く。

大阪春の陣は、例年になく楽しみなメンバーが揃った。

ほんの1週間ほど前に、ドバイで5つのレースを制した快挙がありながら、国内のGⅠもでもメンバーが揃う。

日本馬のトップレベルの層が、非常に厚くなってきた証左のように感じる。

 

絶好の4番枠を引いたのは、ジャックドール。

逃げるにも、好位につけるにも、意図したポジションを取りやすい、これ以上ない枠。

対するエフフォーリアにも、6番枠と好枠が当たる。

内のジャックドールを見ながら、自分の出方を決めることのできる、こちらもいい並びと言える。

藤岡佑介騎手と、横山武史騎手が、1周目のスタンド前でどう動くのか、そして外の14番枠を引いたレイパパレは、昨年逃げ切って勝っている。

近走は好位につける競馬だが、この大一番で川田将雅騎手はどう出るか。

枠の並びからもまた、非常に楽しみになった大阪杯だった。


 

満開の桜の下、今年初めて仁川にGⅠのファンファーレが鳴る。

曇天から少し雨が落ちる空模様の下、コンディションは良馬場での発走。

1周目のスタンド前、注目されたポジション争い。ジャックドールの藤岡騎手は、例によって押しながら出していく。

その外から明確に先手を主張したのは、青枠2頭。ポタジェの吉田隼人騎手と、ウインマリリンの松岡正海騎手。さらに外から、予想されたレイパパレとアフリカンゴールドも出していく。

1コーナー手前で、ジャックドールがハナを奪い切って、隊列が決まっていく。

エフフォーリアは馬群のちょうど中団ほど、「出したなり」という感じで追走している。

 

先手を奪ったジャックドール、番手にアフリカンゴールド、そしてウインマリリンとレイパパレ、その一段後ろの内にポタジェ。ヒシイグアス、エフフォーリアはちょうど中団あたり、キングオブコージ、アカイイトは後方からといった態勢。

ジャックドールは、前半の1000mを58秒8のラップで入る。半馬身遅れた番手から、アフリカンゴールドが厳しいプレッシャーをかけている。

淀みない流れのまま迎えた、3コーナー。

横山武史騎手の手が激しく動くが、エフフォーリアの反応が鈍い。

その姿とは対照的に、前との差を詰めていく周囲の各馬。

迎えた直線、ジャックドールの脚色も一杯に。

それを交わしていくレイパパレ、その外からポタジェが突っ込んでくる。

さらにその外からアリーヴォ、少し遅れてヒシイグアス。

前3頭の激しい追い比べは、ポタジェがわずかにクビ差制した。

きわどい2着に内のレイパパレ、そして3着にアリーヴォ。

ポタジェが、春の中距離王者の座に輝いた。


 

1着、ポタジェ。

前週の高松宮記念・ナランフレグに続いて、重賞初勝利がGⅠの大舞台という快挙。

8番人気、単勝5,870円と春の嵐が、2週続けて吹き荒れた。

操縦性良く、競馬が上手く、いつも重賞戦線で善戦するイメージだったが、このタフなGⅠの舞台で勝ち切る勝負根性を見せてくれるとは、驚きの勝利だった。

前走から手綱を取る吉田隼人騎手の騎乗も、お見事の一言。

前走・GⅡ金鯱賞では、脚を図ったように差して4着。そこから本番の今日は、スタートから明確に出してポジションを取りに行く競馬。

向こう正面では若干かかりそうにも見えたが、すぐに落ち着かせて、勝負どころもタイミングよく押し上げていった、素晴らしい騎乗。

昨今、ステップレースや前哨戦は使わずに、本番直行がトレンドになっているが、ひと昔前の前哨戦~GⅠ本番でよく見られたような騎乗だった。

ポタジェのポテンシャルを、この大舞台で出し尽くす「点」ではなく「線」の騎乗。

まさに円熟の騎乗で、この大阪杯を勝ち切った。

父・ディープインパクトは、前年のレイパパレに続いて2年連続で、この大阪杯を勝利。

母・ジンジャーパンチは、アメリカでGⅠ6勝の名牝。半姉のルージュバックが成し遂げられなかったGⅠ勝利を届けた。

メンバーの揃ったこのGⅠでの勝利で、この先もまた楽しみになった。

 

2着、レイパパレ。

グランアレグリア、コントレイルを完封した昨年の大阪杯からの連覇を狙ったが、わずかに及ばず。ただ、昨年の大阪杯以降は、好位につける競馬を重ねてきたが、それが活きたように感じた。

外枠のスタートから出して行って、ジャックドールに緩めさせなかったことが、締まったレース展開にした一因ではなかったか。あのプレッシャーで、ジャックドールは苦しくなったように感じた。

レース後の川田騎手のコメントでは、前哨戦のGⅡ金鯱賞から中2週でも問題なかったと語っていた。体調を整えながら、レース間隔を空けていた3歳時からすると、馬が強くなってきたのだろうか。

こちらも、次走が楽しみになった2着だった。

 

3着、アリーヴォ。

小倉で3勝クラス、重賞を連勝して臨んだ、この舞台での好走。

直前にクリストフ・ルメール騎手から武豊騎手に乗り替わりとなっていたが、その影響を感じさせない激走だった。

淀みなく流れることを見越してか、後方から静かに追走し、そして3コーナーから4コーナーにかけての押し上げ、直線での進路のさばき方もスムーズ。

円熟味を感じる、名手の騎乗に導かれた3着だった。

 

4着、ヒシイグアス。

個人的には、この馬を一番楽しみに観ていた。

昨年秋、同じ2000mの天皇賞が非常に強い内容での5着だったので、そこから期待していたが、前3頭とは少し差があった。

前年暮れのGⅠ香港カップから直行だったが、もう少しよくなりそうな気もする。

次は、宝塚記念に向かうのだろうか。

ハーツクライ産駒は、二度覚醒する。その金言の再現を、楽しみにしている。

 

5着、ジャックドール。

上に書いた通り、スタートからレイパパレ、アフリカンゴールドに競られる展開だったが、ハナは譲らず、先手を主張した。道中も番手のアフリカンゴールドから、常にマークされる厳しい展開。

これまで逃げ切ったレースは前半1000mが59秒台だった。GⅠのメンバーに圧をかけられながらの58秒8は、さすがに厳しかったか。また、初の重賞挑戦だった前走を勝ち切ってから、中2週の臨戦態勢も、厳しかったのだろうか。

しかし、それでも掲示板は外さず。

厳しい流れのレースを経験は、必ず次に活きる。

個性派逃げ馬の、これからをまた期待したい。

 

そして、1番人気のエフフォーリアは9着に敗れた。

勝負どころで、横山武史騎手の手綱が激しく動くも、全く動かず。

直線も、ほとんど数えるほどしか、鞭も打っていない。

関東馬にとって大阪杯は鬼門とされるが、初の関西遠征、金曜輸送が影響したのだろうか。

いずれにしても、昨年の強さからすると、考えられない敗戦だった。

どこか、故障などでなければよいが…いずれにせよ、まずは疲れを取ってから、次に向かってもらいたい。


 

前週に続いて吹き荒れた、春の嵐。

重賞初勝利がGⅠ制覇の偉業もまた、前週と同じとなった。

ポタジェの大金星、充実の吉田隼人騎手の騎乗が心に残る、2022年大阪杯となった。

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