自立のプロセスでよく出てくる「権威との葛藤」について、お伝えします。
父親、先生、上司、先輩といった「目上の人」と、衝突を重ねてしまう現象です。
その心理的な原因と、そのゆるめ方、そしてその先にある恩恵について、お伝えします。
名著「傷つくならば、それは「愛」ではない」(チャック・スペザーノ博士:著、大空夢湧子:訳、VOICE:出版)の一節から。
1.キャリアの問題を解決するために、父親を許しましょう
多くの人が父親から援助されず、認められず、誤解されたと感じています。
まるで父親から攻撃されたかのように感じているのです。
けれども、父親の競争心を感じるとしたら、それは私たちが競争しているからです。
父親の失敗が見えるのは、私たちがもっとも深いレベルで「お父さんが失敗すること」を願っていたからにほかなりません。
父親にむけて与えるとき、すべての権威的な存在が新しい光のもとに見えてくることでしょう。
父親を許すとキャリアの面でも前進します。
父親とあなたの「男性性」と仕事とは、すべて関連しあっているのです。
「傷つくならば、それは「愛」ではない」 p.238
2.権威との葛藤
「権威のシンボル」が苦手
今日のテーマは、「権威との葛藤」でしょうか。
自立のプロセスにおいて、よく出てくる問題の一つです。
権威のシンボルを持つ相手との間に、葛藤を抱えたり、あるいは衝突したりする現象を指します。
この「権威のシンボル」は、家庭のなかでは父親がそれにあたる場合が多いですが、母親、祖父、祖母といった存在がそれにあたる場合もあります。
家庭の外であれば、先生、先輩、上司、あるいは目を広げれば政治、社会といったものも、権威のシンボルになります。
こうした存在に対して、
「どうも素直に言うことを聞けない」
「なんだかよくわからないけど、ニガテ」
「自分のやり方のほうが優れてると思ってしまう」
「頑張っているのに、いつも自分だけが評価されない」
…などといった想いを抱くのが、「権威との葛藤」とよばれるものです。
そして、自分がその立場になったときに、下の立場の人から攻撃されるような気がして、よい関係性を築くのが難しかったりします。
「権威」に対して抱いている感情を、そのまま自分自身に投影してしまうわけですね。
このように、「権威との葛藤」を抱えていると、「縦の人間関係」に、大きな影響をおよぼします。
はい、ご多分に漏れず、私もずっと抱えてきました笑
「絶対に自分の言っていることが正しい」と上司に反発して、ケンカして、競争して…
そして、それを自分自身に投影するものですから、周りを信頼できず、孤立するわけです。
結果、どれだけやっても報われない。
回し車を走るラットレースのような、もがくほどに落ちていく蟻地獄のような、そんな感じが仕事でしていました。
はい、「権威との葛藤」の教科書に載せたいですね、ほんと笑
「権威のシンボル」との原初体験が、葛藤をつくる
さて、そうした「権威との葛藤」ですが、そのルーツ、原因というのは、一般的には父親との関係にいきつく場合が多いようです。
ただ、それは父親が家庭のなかで「権威のシンボル」となっていることが多いからですので、権威的な人が母親であったり、祖父であったりする場合もあります。
以前の日本社会では、母親が家庭を守り、父親が外で働く、というのが一般的でしたが、昨今はずいぶんとそれも変わってきました。
「権威のシンボル」というのも、父親以外の場合も増えてくるのでしょう。
ごく単純化したたとえで言うならば、父親(権威のシンボル)が非常に厳しく、常に叱られて育った場合、「権威から愛されない」という想いを抱くことがあります。
そうすると、権威の象徴に対して委縮してしまったり、自分のことを過小評価してしまったりして、仕事の上で葛藤を抱えたりします。
あるいはその反対に、父親が仕事ばかりで家庭を顧みなかったため、母親がよく苦労している姿を見てきた。
それゆえに、「父親みたいには絶対にならない」、「あんな生き方はイヤだ」という想いを抱いたりします。
そうすると、権威を持つ相手に対して反抗的、攻撃的になったり、競争しようとしたり、あるいはそうした攻撃性がゆえに、孤立したり孤独を抱えやすくなります。
こうした心理は、男性だと非常に分かりやすいですよね。
多くのドラマや演劇で描かれていますが、男性にとって「父親を超える」ことが、非常に重要であると同時に、困難をともなうものです。
一方で、女性にとっては、父親は異性の親であるがゆえに、母親との関係も入り混じったりして、少し複雑になることもあります。
いずれにせよ、「権威との葛藤」は、権威のシンボルとの原初体験(権威とどのように接してきたか)が、問題の根っこになることは間違いないようです。
私の場合は、社会人として働きだす前に、父親を突然亡くしました。
そうなると、「超えるべき父親=権威」がなくなるわけですから、ずっと競争し続けないといけないわけです。
目標、あるいはゴールがない、といいますか。
そして、「権威(父親)は、自分を突然見捨てる」という観念を抱くわけです。
だから、権威的な存在に対して、敵視したくもなるわけです。
「ぼくを、こんなにひどい目にあわせて!」と。
まあずいぶんと、そのことにも向き合ってきましたが、まだまだ道半ば、なのでしょうね。
ええ、許しや癒しと同じで、きっとその道は一生続くのでしょう。
3.「権威との葛藤」を癒すために
父親(権威のシンボル)を許すこと
さて、そうした「権威との葛藤」。
それを緩め、癒していくための視点を、最後にお伝えしたいと思います。
私のブログを読む方なら、ご想像の通りかもしれませんが、
「父親を許しましょう」
という、いつも通りの結論です、はい。
父親、というのは権威のシンボルですので、人によっては、その対象が母親や祖父、あるいは祖母であったりもします。
ではどうやって許すか?という方法論は、長くなりそうなので、ぜひこの下のブログを参照してみてください。
「「許せない」という思いを手放したとき、ものの見方が変わる」 - 大嵜直人のブログ
誰かを責め続けることの怖さと、そこから抜けるための「許し」のプロセスについて。 - 大嵜直人のブログ
一般的には、「感情の解放」→「感情的理解」→「感謝(を与える)」→「恩恵(を受けとる)」というプロセスを踏みます。
今日は、そうしたプロセスの説明よりも、シンプルな二つの質問で、締めくくりたいと思います。
便宜上、「お父さん」という言葉を入れていますが、権威のシンボルと感じる人に、入れ替えてみてくださいね。
「あなたのお父さんは、どんな愛し方をする人なのでしょう?」
愛し方って、ほんとうに人によって、千差万別です。
言葉にする、一緒に過ごす、笑顔を贈る、仕事でお金を稼ぐ、見守る…
いろんな愛し方があると思います。
それは、分かりやすい愛し方もあれば、なかなかぱっと見ではわかりづらいものもあります。
あなたのお父さんは、どうやって人を愛する人でしょうか。
少し、時間をとって考えてみる価値のあることだと思います。
そして、もしそれが出てきたら、もう一つ、考えてみたいことがあります。
「どうして、お父さんは、その愛し方をするのでしょう?」
お父さんが、その愛し方をするのは、どうしてなのでしょう。
なぜ、そのように愛するのでしょう。
どうして、そのように「しか」愛せなかったのでしょう。
これは、明確な答えがある問いでは、ありません。
ただ、考え続ける価値のある、問いであると思います。
すぐに、答えの見つかる問いではありません。
また、こうだと思っても、時間とともにその答えは変わっていくかもしれません。
けれども、そのプロセスは、きっと「権威との葛藤」をゆるめてくれると思うのです。
「権威との葛藤」と向き合う恩恵
そして、「権威との葛藤」と向き合うことは、その先に大きな恩恵を与えてくれます。
それは、人としての成熟性を高め、一人の大人としての自信をもたらします。
それを周りにも投影しますから、相手を理解し、受容し、その価値を認め、相手の意見を尊重したコミュニケーションが取れるようになります。
また、リーダーシップを取ることに抵抗がなくなり、つながりを感じることができるようになります。
それゆえに、チームや組織全体を成功に導く力が芽生えます。
また、自分を縛る観念から自由になるので、自分らしい生き方、自分らしい目標やビジョンを見つけやすくなります。
それは、いままで抱えてきた、「おもり」が取れて、とても軽くなったような感覚に近いのかもしれません。
「権威との葛藤」とは、形はさまざまですが、誰もが抱えるものです。
自立のプロセスですから、当然と言えば、当然なのかもしれません。
けれども、いまそうした葛藤に苦しんでいたとしても、その先には上にあげたような恩恵があることは、あわせてお伝えしたいと思います。
今日は、「権威との葛藤」の問題と、そのゆるめ方について、お伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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