大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

赤い実ひとつ、冬の名残のように。

寒の戻りがありながらも、陽の光は確実に力を増してきているようです。

時候は、立春からもうすぐ雨水へ。

七十二候では「魚上氷(うおこおりをいずる)」。

徐々に上がってきた気温に、魚たちが元気に泳ぎ回る姿が見られる時候です。

暖かな春は、少しずつ近づいているようです。

いつもの道の樹木にも、小さな赤い実がなっているのを見つけました。

いつの間に、実をつけていたのでしょうか。

朝日に照らされて、その色を輝かせていました。

赤、というのは実に不思議な色のように思います。

燃える炎や、太陽の色。

リンゴの色や、イチゴの色。

バラの花の色。

消防車の色。

神社の鳥居の色。

私たちの、血の色。

燃え盛るようなエネルギーを持った色でありながら、どこかその色がふさわしいのは、冬の季節のように思うのです。

冬枯れ、という言葉があるように、生命のサイクルの中では終わりの季節が冬なのに、不思議なものです。

赤以外の、冬の色といえば。

枯れ木や落ち葉の茶色、灰色、あるいは雪の純白。

モノトーンの色調のなかにありながら、赤もまた冬の色のように感じます。

冬が終わると、春がやってくる。

生命のめぐりの、終わりとはじまりが重なる場所。

そんな季節が、冬なのかもしれません。

小さな赤い実は、どこか冬の名残のように感じられました。

春、近し。

季節は、今日も移ろいゆくようです。