長雨が続く。
明けない、梅雨。
それでも、昼前からやさしくなった雨足は、昼過ぎには止んだ。
夕方には、雲の切れ目から陽の光も見えた。
その色は、夏の力強さというよりは、久しぶりに地を照らすやさしい色をしていた。
午後7時過ぎ。
先月の下旬、夏至の頃はまだ煌々と明るかったように覚えている。
それが、今日はもう夕暮れの気配がしている。
梅雨もまだ明けないのに。
夏が、気付かぬ間に通り過ぎて行ってしまいそうで、寂しさを覚える。
ぎらつくような、あの真夏の日差し。
1年前に仕舞ったそれを、こころの片隅から引っ張り出してくる。
生命力と、その裏返しの、はかなさと。
ふと。
入道雲の見える青空のもと。
朝顔のツルが巻き付いた鉢を小脇に抱え、家路を急ぐ風景が思い浮かぶ。
終業式を終え、夏休みに入った解放感。
透明感のある、その日差し。
誰の記憶だろう。
幼い頃の記憶の薄い、私のものではないような気もする。
それでも、抜けるように透明なあの日差しの色は、どこか懐かしい気もした。
日が暮れていく。
傾いた日差しの空は、夕闇へとその色を変えていく。
懐かしさは、寂しさへと形を変えていく。
留まることのない、その調色。
雲の色、空の形。
ふと、西の空。
あの丸い看板の向こうに、日は落ちていく。
世界を黄金色に染めながら。
燃えるように、盛るように。
それでいて、うだるように、悶えるように。
夏、そのままに。