「秋晴れ」の言葉が似合うくらい、よく晴れていた。
それでも、霜月下旬ともなれば、やはり空気は冷たい。
その冷たさと、日差しとのギャップが、どこか心地よかった。
いつもよりも、少し遅い時間での参拝。
境内の雰囲気も、また少し違って。
毎年1月5日の「初えびす」が有名な、上知我麻神社。
商売繁盛・家内安全を願い、日付が変わる真夜中から多くの人が熊手を求める姿は、この熱田の正月の風物詩だ。
今年は、どうなるのだろう。
人が集まることが禁じられるご時世、また別の形になるのだろうか。
それでも、人々の願いはきっと変わらず続いていく。
ただ、目に見える形が変わるだけなのかもしれない。
その近くの、別宮八剣宮。
ひんやりとした空気が、心地よく。
もう小雪ながら、境内に咲いている花も。
寒空に、とても合っていて美しく。
本宮まで歩いているうちに、雲一つなく晴れていた。
雨の神社もまた趣深いが、晴れた朝の境内の心地よさは格別だ。
昨今はマスクをする機会が増え、どうしても呼吸が浅くなっているような気がする。
けれど、境内を歩いていると、自然と呼吸が深くなるようで。
本宮横から入る、「こころの小径」。
今日は、ここが歩きたかった。
午前9時~午後4時までしか開門しないため、なかなかその時間に来れなかった。
その奥には、「一之御前神社(いちのみさきじんじゃ)」の社がある。
神宮の御祭神である熱田大神(=草薙神剣を御神体としてよせられる、天照大御神)の荒魂をお祀りしているとされ、撮影禁止などの注意事項が多いことからも、神域なのだろう。
玉砂利の音に耳を傾け、こころしずかに歩く時間。
名古屋の真ん中で、このような場所があることが、実に不思議だ。
森を一歩出れば、多くの車が走る喧噪の街なのに、別世界にいるようで。
秋冷が、心地よかった。
大きなご神木にも、手を合わせて。
深呼吸を重ねる。
帰りの参道で、思いがけず冬の花。
花びらが落ちているところを見ると、山茶花だろうか。
冬にはこの赤が、よく似合う。
めぐる季節とともに。
日差しの色が、いつの間にか冬の色に。
冬の花は、その中で咲く。