大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

2023年、再戦だ。 ~2022年 朝日杯フューチュリティステークス 回顧

1.レース・出走馬概要

前週に続いて、仁川で施行される2歳GⅠ、朝日杯フューチュリティステークス。

前週と同じ、阪神の外回りマイル戦を舞台に争われる、2歳マイル王者決定戦。

阪神開催となったのは2014年からで、それ以前は中山で開催されていた。

中山開催の時代は、1989年アイネスフウジン、1991年ミホノブルボン、そして1993年ナリタブライアンと、翌年のクラシックで活躍する優駿たち、あるいは1994年フジキセキ、1997年グラスワンダーと外国産馬の怪物たちがその輝きを見せてきたレースである。

2017年にホープフルステークスがGⅠに昇格したこともあり、朝日杯はマイラー資質を問う傾向が強くなっていたが、昨年当レースを勝ったドウデュースが日本ダービーをレコードで制覇。

ナリタブライアン以来、28年ぶりとなる朝日杯勝ち馬のダービー制覇となった。

さらには、同レース2着のセリフォスが秋のマイルチャンピオンシップを勝ち、3着のダノンスコーピオンはNHKマイルカップ勝利、5着のジオグリフが皐月賞を勝つなど、振り返ってみると昨年は非常にメンバーの揃った一戦だった。

今年もまた、未来のマイル戦線を担う若駒と、クラシックを見据える逸材の激突となるのか。

 

人気を分け合ったのは、ドルチェモアとダノンタッチダウン。

最終的には、前者が1番人気となった。

札幌の新馬、そしてGⅢサウジアラビアロイヤルカップを連勝したドルチェモア。

その前走のサウジアラビアロイヤルカップでは、後続を離して逃げたグラニットを上がり3ハロン33秒4の末脚で差し切った。

母・アユサンは2014年の桜花賞馬であり、同じ舞台での好走に期待がかかる。

鞍上は、前2走の横山和生騎手から坂井瑠星騎手に乗り替わり。

 

一方のダノンタッチダウンは、先日のGⅠ香港カップで2着に好走したダノンザキッドの半弟。

前走のGⅡデイリー杯2歳ステークスは2着に敗れるも、デビューから2戦連続で上がり3ハロン最速を記録しており、末脚の鋭さは非凡。

鞍上の川田将雅騎手は、前週の阪神ジュベナイルフィリーズに続いて2週連続でのGⅠ獲りに挑む。

 

続く3番人気に支持されたのが、外国産馬のレイベリング。

ドバイの2歳セールで、ビッグレッドファームが落札した、期待のフランケル産駒。

11月末の東京の新馬戦を勝って、中2週で阪神に乗り込んできた。

その新馬戦の内容が出色で、道中不利を受けながらも上がり3ハロン33秒1の豪脚で突き抜けた。

キャリア2戦目、最短でのGⅠ戴冠なるか。

 

GⅡデイリー杯2歳ステークスを逃げ切って勝ったのが、オールパルフェ。

注目の新種牡馬・リアルスティール産駒、大野拓弥騎手とともに2歳頂点を狙う。

 

人気薄で新馬、GⅡ京王杯2歳ステークスを連勝してきたオオバンブルマイは、5番人気の支持を受けた。

こちらも新種牡馬・ディスクリートキャットの産駒であり、レースセンスの良さを活かして初のマイル戦に挑む。

 

さらに、今年デビューの新人・角田大河騎手は、ウメムスビとともにGⅠ初騎乗となった。

同世代で一番乗りのGⅠ騎乗を果たし、史上初のデビュー年GⅠ勝利の偉業に挑む。

 

2023年を担う2歳牡馬17頭が師走の仁川に集った。

コンディションは晴れの良馬場も、当週の土曜日からインコースを通った先行馬が好結果を残している馬場状況だった。

2.レース概要

乾いた師走の風を受けながら、ゲートが開く。

武豊騎手の15番フロムダスクが、1馬身ほど出遅れる。

好スタートは2番枠のドルチェモア。

先行型が多く、激しくなると予想された先手争いのなか、好枠から悠々とハナを奪う。

それを外からオールパルフェ、バグラダス、グラニットが並びかけていく。

ドルチェモアの坂井瑠星騎手は、スッと自然に抑えてオールパルフェ、グラニットを先に行かせる。

中団外目からの追走は14番レイベリング。

そして驚いたのが、ダノンタッチダウンのポジション。

馬群を前から追っていくと、緑帽子の「ダノン」の勝負服が、なんと中団後方の「インコース」を追走している。

12番枠のスタートから、この短い間にどうやって潜り込んだのか。

さらに後方のポジションとなったのは、オオバンブルマイ。

各馬の意志と思惑が反映された隊列は、やや縦長で進んでいく。

オールパルフェが引っ張り、淀みのないペースが刻まれ、前半800mは45秒7と流れた。

阪神外回りの大きな3コーナーをカーブして、徐々に馬群が縮まっていく。

先頭オールパルフェ、その外にグラニットの態勢で直線を向く。

その前の2頭を、最内から馬場の真ん中に進路を取ったドルチェモアが猛追。

その後ろから伸びる、レイベリング。

さらに大外からダノンタッチダウンが鬼脚で迫る。

残り100mを切って、ドルチェモアが抜け出す。

外からダノンタッチダウンが迫るも、わずかに届かなかった。

ドルチェモア、1着。

勝ち時計は1分33秒9。

クビ差の2着にダノンタッチダウン、さらにクビ差の3着にレイベリング。

結果的に、上位人気3頭での決着となった。

3.各馬戦評

1着、ドルチェモア。

絶好のスタートから、自然に控えて折り合える自在性の高さが、実力拮抗の上位馬の中で輝いた。

好枠を活かし切ったポジション、そして一呼吸置いて追い出し、馬場の真ん中にエスコートした坂井瑠星騎手の手綱さばきが見事だった。

これで坂井瑠星騎手は、先の秋華賞のスタニングローズに続いて、GⅠ2勝目となった。

GⅠで1番人気を背負っての、この好騎乗。

新時代の訪れを感じさせる、若き才気の輝きだった。

母・アユサンに続いて、この阪神1600mのGⅠの舞台を制した。

その母も生産した名門・下河辺牧場は、2017年の菊花賞(キセキ)以来となるJRA・GⅠ勝利となった。

4着に入ったキョウエイブリッサの父も、同牧場生産のグレーターロンドンであり、この2歳GⅠで存在感を示す結果となった。

そして初めてのGⅠ勝利となったのは、馬主のスリーエイチレーシング。おめでとうございます。

昨年の同レースの勝ち馬は、日本ダービー馬となった。

ドルチェモアの2023年は、どんな航路を描くのだろう。楽しみにしたい。

 

2着、ダノンタッチダウン。

川田将雅騎手の、これぞ名手という騎乗だった。

外枠の発走から、まるで忍者のように内に潜り込み、そして直線は馬群を捌いて外へエスコート。

騎手としてできることは、これ以上ないのではないかと思うような騎乗だった。

ただクビ差だけ、勝ち馬が前にいた、そんな感すら受ける。

タラレバは言っても意味が無いのだが、勝ち馬と枠順が逆だったら、と思わせるものだった。

スタートの巧拙が勝ち馬との差があったが、純粋な脚力はやはり世代上位、さらに今後の伸びしろも十分に見える。

距離が伸びても面白そうだが、レース選択を含めて、今後を楽しみにしたい。

 

3着、レイベリング。

新馬勝ちから中2週、さらに輸送競馬。

それでいてプラス体重で出てくるあたり、心身ともにタフなのだろう。

馬が内を回した馬が上位にくる中、外枠からそのまま外を回しての僅差の3着は、相当に強い。

まだキャリア2戦目、新馬戦から3週後のGⅠでこの走りは、可能性しか感じない。

同世代の一線級と走り、そして負けたことは必ず伸びしろになる。

デビュー戦で見せた才気の輝きは、誰もが認めるところ。

成長と、そして再戦を楽しみにしたい。


 

激戦の中、輝きを放った若き人馬。2023年、再戦だ。

2022年朝日杯フューチュリティステークス、ドルチェモアと坂井瑠星騎手が制す。

 

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