誰しもが、誇り高く咲ける場所があります。
そうでなかったときは、そこで咲いている人の場所だと割り切ることも大切なようです。
二頭の短距離のスペシャリストが、覇を競った思い出のレースについて綴ってみたいと思います。
1994年、マイルチャンピオンシップ。
当時の短距離界の両雄、ノースフライトとサクラバクシンオーの3度目にして最後の対決。
同年6月の安田記念1600mはノースフライトに軍配。
同10月のスワンステークス1400mはサクラバクシンオーが日本レコードの快走で雪辱。
スワンステークスでの充実ぶりを見る限り、バクシンオーのマイルでの戴冠とも匂わせたが、「マイルのフーちゃん」は引退戦を定義づけられた一戦で見事に有終の美を飾る。
この距離では、譲れない。
そんなフーちゃんの声が聞こえそうな1分33秒ジャスト、コースレコードでの完全なるフライト。
1600m5戦5勝、生粋のマイラーのノースフライト。その一方で、彼女は1600m~1700m以外の距離では未勝利。
1400m以下12戦11勝、超一流のスプリンター、サクラバクシンオー。彼もまた、その一方で1400mを超える距離では生涯勝てなかった。
誰しもが、それぞれに誇り高く咲ける場所がある。
そのスイートスポットを外れたところで思うようにいかなかったとしても、その人の輝きは何ら失われることはない。
2017.11.19
「マイラー」とは、その名の通り1マイル=1600mの距離を得意とする競走馬のことです。一方でそれより短い距離を得意とする馬は、「スプリンター」と呼ばれます。反対に長距離を得意とするのは、「ステイヤー」です。
名マイラーのノースフライトと、
ベストスプリンターのサクラバクシンオー。
舞台を変えての3度の対決は、どれも見ごたえがありました、
ノースフライトのスプリントでの敗戦。
サクラバクシンオーのマイルでの敗戦。
どちらも、両者の価値を貶めるものでは全くありません。
それぞれに誇り高く咲ける場所での無類の輝きは、美しいものです。
そんな場所が、誰にでも必ずある。
そう思うだけでも、肩の力が抜けるのかもしれません。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。