降る雨に、暖かさを感じるようになりました。
時候は、「立春」から「雨水」へと移り変わるころ。
冷たく凍った氷を、東風が溶かしたのちに。
降る雪も雨に変わり、雪解けとうるおいをもたらすころです。
ごく微かだった春の音色が、すこしずつはっきりとしてくるころでもあります。
この時期の雨というのは、不思議なものです。
雨、というよりも、水がそうなのでしょうか。
冷たければ氷となり、温度が上がれば雲や霧といった気体になる。
そして、水自体もまた、冷たかったり、暖かかったりするようです。
寒いなかで降る雨。
それは冷たく感じるはずが、この時期の雨は、暖かさを含んでいるようです。
春を待つ人の心が、そうさせるのでしょうか。
雨水の時期に降る雨は、雪解けをもたらすものでもあります。
冷たく、固く降り積もった雪も、ずっとそのままでいるわけでもなく。
この、暖かさを含んだ雨が、それを溶かしていくようです。
雪解け、という言葉は、和解といった意味もあります。
どんなに固く閉ざされた心であっても、ずっとそのままということは、ありません。
時がめぐれば、暖かさを含んだ雨が降るように。
いつかは、雪解けに至るのでしょう。
降る雨がもたらす、暖かさと潤い。
それらに想いを寄せながら、春を待つことにしましょう。