少しずつ鈴虫の声が聴こえてくるようになりました。
海のもの、山のもの。秋にはたくさんの食材がそろいますが、それらの食材の「はしり」が出始める、ワクワクする季節です。
一方で、生命力にあふれた夏が終わりを告げる感傷的な季節でもあります。
今日は少しそんな言葉をご用意いたしました。
折角ですので、もしよろしければ窓を開けて、鈴虫の音色とあわせてお楽しみくださいませ。
夏の終わりに
お盆が過ぎ去り
甲子園に残る高校も数えるほどになり
ツクツクボウシとヒグラシが
その哀しげな声を響かせ
みの宿題というマモノが
少年たちの脳裏に見え隠れしながら
日中のアスファルトの陽炎よりも
朝晩に吹く一陣の風に
秋を感じ始める
この季節が好きだ。
永遠に続くと思われた暑さと
蝉の喧騒は
少しずつ力を失い
夕闇と涼やかな音色の虫の歌に
取って替わられる。
ものごとには
はじまりとおわりがある
螺旋であることを実感する
センチメントの季節。
ぎらつく陽射しに焼けた少年は
その太陽の熱気と陽炎よりも
自らの羽根を傷つけ地に落ちた
蝉を見る季節に
成長の証を見る。
この季節が好きだ。
今年も戻ってきてくれた
この季節を味わおう。
2017.8.22
お好きな季節は、ございますか。
好きな季節がある、というのはありがたいものです。
毎年、毎月、毎日、移りゆく先に、必ずその好きな季節が巡ってきますから。
この夏の終わりの一日に、どうぞごゆっくりされていってください。