大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。それでも、愛することを諦めきれないあなたへ。

水無月、府中への帰還。 ~2020年安田記念 回顧

ダービーが終わった後は、どうしても「祭りのあと」の虚脱感と弛緩がある。
あぁ、今年も終わってしまった、と。

けれども、翌週から行われる新馬戦と安田記念が、いつもその虚脱感を現実に引き戻してくれる。

私が競馬を見始めた頃は、夏の新馬戦と言えば、仕上がりの早い短距離血統が席巻するイメージで、注目馬は秋以降の開催でデビュー、というのが一般的だった。
それが最近は、早めにデビューさせてゆったりしたローテーションで、翌年のクラシックを勝つ注目馬や良血馬が、この6月開催の新馬戦でデビューすることもあり、夏の新馬戦から目が離せない。

今年も注目の良血馬あるいは新種牡馬の仔が、「一週目」からデビューに向けてスタンバイしている。

 

そして、安田記念。
今年はあのアーモンドアイが出走してくれることになった。

ここを勝てば芝のGⅠ・8勝目、シンボリルドルフ、ディープインパクトなどの名馬たちの持つ、芝のGⅠ・7勝を更新することになる、偉業のかかった一戦になった。

加えて豪州帰りのダノンプレミアム、昨年のクラシックを賑わせたダノンキングリー、東京マイルのレコードホルダー・ノームコア、昨年の春秋マイル王・インディチャンプ。

さらには、香港マイルを制圧したアドマイヤマーズ、昨年の桜花賞馬・グランアレグリアなど、出走14頭のうちGⅠ馬10頭と、史上最高のメンバーで春のマイル王を争うことになった。

祭りの後の弛緩があるダービーの翌週だが、寂寥感に浸っているわけにもいかないメンバーでの一戦となった。

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前日に降った雨から、稍重のコンディションになった府中。
梅雨入り前だが、夏らしい空が広がっている。

アーモンドアイは、パドックから返し馬と、落ち着いて泰然自若としているように見えた。

5週連続の、府中に響き渡るファンファーレ。
全馬のゲートインが終わる。

息を呑んだ瞬間、声が出た。

水色に赤水玉の「シルク」の勝負服が、ゲートに突っかけたのが、見えたからだ。

どっちだ。アーモンドアイか、それともインディチャンプか。
その思考が働いた刹那、ゲートが開く。

 

出遅れたのは、アーモンドアイだった。

すぐにおっつけて中段に取りついていくが、このロスがマイルの猛者どもが揃った今回で、どう影響するか。

ハナを切ったのは、大外から快速を飛ばしてダノンスマッシュ。
それを露払いに、ケイアイノーテック、ダノンプレミアム、ダノンキングリー、アドマイヤマーズが続く。
ミスターメロディ、セイウンコウセイといったスプリント勢も、テンの速さを主張して先行争いを演じる。 

やはり、スプリント勢の強豪が参戦するマイル戦は、締まった流れになり地力が試される。

そこから馬群が切れたところに、グランアレグリア。
結果的には、この激しい先行争いを見ながら、楽に追走できるこのポジションを取れた池添騎手のファインプレーだったのだろう。

その後ろにインディチャンプ、アーモンドアイが並び、ノームコアも末脚に賭ける。

 

直線に向き、各馬が横一線に広がる。
アーモンドアイは外に進路を確保するが、前走ほどの手応えはない。

坂を登ったあたり。

オレンジの帽子、グランアレグリアが突き抜ける。
アーモンドアイもようやくエンジンがかかって追い込んできたが、届かない。

グランアレグリア1着。

よく追い込んできたアーモンドアイが2着を確保、3着にインディチャンプ。

アーモンドアイはさすがの2着というべきだったが、芝のGⅠ勝利の新記録達成は成らず。
秋以降に、その偉業は持ち越された。

それにしてもグランアレグリアは、スタート、道中のポジション、仕掛け、そして直線の捌き。
すべてが噛み合った、完璧なレースだった。

勝利ジョッキーインタビューで、芝のキックバックが当たったという右目を腫らしながら、池添騎手は満足そうな表情を浮かべていた。
この人のここ一番での勝負強さは、やはり尋常ではない。

これでグランアレグリアの戦績は8戦5勝、GⅠは昨年の桜花賞に続いて2勝目。
圏外に敗れたのは、その桜花賞から中3週で挑んだNHKマイルカップ(5着、降着)のみ。

デビューから間隔を空けて、大切に使われてきたことで、持てる力を十二分に発揮できるのかもしれない。

 

そういえば、彼女がデビューしたのは、2年前のダービーの翌週である6月1週目の新馬戦。

デビューした水無月のはじめ、デビューした府中へ帰還した彼女は、現役最強牝馬を破るといて大きな大きな金星を挙げた。

アーモンドアイが負けたレース、ではなく。

グランアレグリアが勝ったレース。

そう語り継ぎたい、名勝負の余韻が残った。 

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