本が好きなのだが、「装丁の美しさ」というのは、本を選ぶうえで重要なファクターの一つだと思っていて。
それは、電子書籍にはない要素かもしれない。
書店に並んでいる多くの本の中で、ふと目に留まって手に取りたくなる装丁の本がある。
そうして選んだ本は、自分の好みに合う本である場合が多いような気がする。
やはり、何か波長が合うというようなことが、あるのだろうか。
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書店で見かけた装丁に惹かれて、4年前からこの本を買っている。
「田端到・加藤栄の種牡馬辞典」。
装丁もさることながら、中身のレイアウトやデザインも、見ていて心地よい。
もちろん、競馬のロマンが凝縮された「血統」についての書籍なのだから、惹かれるのは当たり前なのだが。
本×競馬×データという、私の好きな要素が二重三重になっている。
そんな「種牡馬辞典」だが、もう新しいものには会えないと思っていた。
昨年までの出版元が、民事再生法を適用したと聞いたからだ。
しかし、やはりファンの多いコンテンツは強いということか、新しく「オーパーツ・パブリッシング」さんから発行される(発売はサンクチュアリ出版)運びとなったようで、嬉しく思っている。
ディープインパクト、キングカメハメハの両巨頭亡きあと、覇権を握るのはどの種牡馬か…
ドゥラメンテ、モーリスなどの新種牡馬の傾向は…
今回の特注馬は…
などなど、ページをめくりながらトリップしてしまう。
300年の昔から、連綿と紡がれてきた血の物語。
そのスケールの大きさに想いを馳せながら、血統表を眺めるのは、至福の時間だ。
競馬を見始めて30年あまりが経ったが、嬉しいのは血統表にその現役時代を知っている馬が増えたことだ。
人間の数倍のスピードで、その生を全うするサラブレッド。
そのサラブレッドに流れる、「時」の早さを思わずにはいられない。
産駒の距離別成績、コース別の傾向、あるいは血統表などなど、興味のない人にとっては、何のことやらわからない数字の羅列やカタカナかもしれない。
けれど、それを眺めているのは楽しい。
「好き」というのは、本来そういうものなのかもしれない。