依存時代に傷ついた分、人は自立します。
その痛みには、「大切な人を幸せにできなかった」というものもあります。
しかし、それはほんとうでしょうか。
１．自立の人がコントロールしたがるわけ
昨日は、自立の人がコントロールしたがるわけ、というテーマでお伝えしました。
自立の人が、コントロールしたがる理由。 - 大嵜直人のブログ
プロセスを楽しむ、というお話からの流れでした。
何かに取り組むとき、問題を解決しようとするとき、結果が出ることが一番望ましいのですが、自分の思った通りの結果が出ないとき、苦しいものです。
そうしたときに、「プロセスを楽しむ」ことができると、その結果が出るまでの時間を楽しむことができるようになります。
結果にこだわるのも大切なことですが、その道中も楽しめたら、なおいいですよね。
しかし、このプロセスを楽しむというのが、自立的な人にとっては難しかったりします。
自立的な人は、結果に限らず、いろんなことをコントロールしようとする傾向が強いからです。
「こうでなければダメ」というこだわりが、強すぎる傾向があるのが自立の特徴です。
では、なぜ自立の人がコントロール大好きなのか？というのが、昨日のテーマでした。
そもそも、人がなぜ自立するかというと、それは依存の時代に傷ついたからです。
人は誰でも依存の状態から始まるのですが、その依存の時代に、自分が欲しい愛が与えてもらえないと感じて、傷つくがゆえに、自立します。
餌をもらえなかったヒナが、「それなら、もう自分でやる！」とばかりに、一人でがんばろうとするわけです。
これが自立するプロセスですが、そのなかで、なんでも自分のコントロール下に起きたがるようになるわけです。
言ってみれば、自立の人にとってのコントロールとは、自分が傷つくのを守るための鎧なんですよね。
鎧は鎧で、傷つかないように自分を守ってくれるものですが、さりとて、ずっとそれを着たままでは、くつろげないし、誰かと親密にもなれなかったりします。
だから、ときにはコントロールをゆるめて、鎧を脱いでいくことが、自立の人にとって必要なことなのでしょう。
２．依存時代のもう一つの痛み
人が自立していくのは、依存時代に傷ついたから、と先ほど書きました。
依存とは、自分では何もできないし、それゆえに誰かに頼るしかない状態です。
そこでは、無力感や無価値感に苛まれることが多くあります。
先ほど、餌を待つヒナのたとえを出しましたが、自分が欲しい餌（あるいは愛）が与えてもらえないと、しんどいものです。
それなら、自分でがんばって餌をゲットしに行った方が、よっぽどいい。
そうやって、人は自立していきます。
この「欲しいものが与えてもらえない」というのが、依存時代の大きな痛みなのですが、もう一つ、依存時代には大きな痛みがあります。
それが、「自分の大切な人を笑顔にできなかった」という痛みです。
あるいは、「愛する人を幸せにできなかった」と言い換えてもいいかもしれません。
依存時代は、無力感や無価値感を感じることが多い、と書きましたが、それが大きく出てくるのが、この場面なんですよね。
自分の大事な人が、辛そうにしていた。
悲しい想いをしていた。泣いていた。
自分から見て、その人は幸せそうじゃなかった。
自分は、その人が笑顔になるために、全力を尽くした。
けれども、その人は、笑顔にならなかった。
その人というのは、パートナーかもしれませんし、母親かもしれませんし、自分によくしてくれたおじいちゃんかもしれません。
そうしたときに、無力感を覚え、「もっと、自分のできることがあれば」と、自立していくのです。
この「自分の大切な人を幸せにできなかった」というのは、人が依存時代に感じる大きな痛みです。
３．自立の大きな勘違い
大切な人を、笑顔にできなかった。
それは、自分が辛い想いをするよりも、しんどいことだった。
もっと、あの人の笑顔を見たかったのに。
もっと、幸せそうにしていてほしかったのに。
だから、もうあんな痛い想いをしないように、その人を幸せにできる力を得たくて、自立していくわけです。
自分でできることを増やし、少々のことでは泣き言を言わず、その人に与えられるような力を持つために。
自分一人で、頑張っていくわけです。
けれども、その人を笑顔にできなかった、幸せにできなかったのは、果たして自分だけの責任なのでしょうか。
ここに、自立の人がよくしてしまう、大きな勘違いがあります。
究極的に言ってしまえば、その人の幸せは、その人が決めるものです。
幸せとは、周りの誰かに与えてもらうものでもなく、その人が感じるものです。
その人が辛そうな顔をしていたとしても。
それは、自分自身のせいにするのは、少し自責が強すぎるのかもしれません。
そして、そこまで割り切った見方をせずとも、依存の自分が与えられていたことに目を向けてみても、いいのかもしれません。
依存の状態だったとしても。
自分自身が、そこにいることで、相手に与えてきたもの。
それは、どんなものがあるでしょうか。
そしてそれが、どれくらい相手にとって、ありがたいものだったのでしょうか。
そんなものは無い、と思われますでしょうか…？
ほんとうに、そうなのか。
それは、よくよく考えてみてもいい問いかけだと思うのです。
今日は、自立の大きな勘違い、というテーマでお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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