大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

晩秋の訪いは、カラフルな葉の色とともに。

風が、少し冷たかった。

朝方見えていた陽の光は、雲の向こうに隠れてしまったようだ。

ひんやりと肌に触れる、その感覚。 

その久しぶりの感覚にしばらく身を浸していたが、ふと我に返ってそれが晩秋の訪いを意味するのだと思った。

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時候は「寒露」からもうすぐ「霜降」へ。

露から、霜へと変わる。 

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息子と娘と、自転車で桜並木の坂を下っていく。

頬が風を切る感覚。

それもまた、久しぶりだった。 

小さな自転車を必死で漕いで、遠くへ出かけた遠い日の思い出。

あの自転車で、世界のどこまででも行けるような気がした。

接着剤で固めたように重いペダルを、力いっぱい踏んで。

川にかかった大きな橋を渡った。

橋の頂上までやってくると、一気に視界が広がった。

青々と広がる田んぼ、遥か彼方の山々、そして遠く都会に見えるビルの群れ。

頂点から、ブレーキをかけずに下った。

並走するバイクよりも、車よりも、時間よりも。

速かったような気がした。

どこまでも行けるような、そんな気がした。

遠い日の、記憶。

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坂もなだらかになったところに、金木犀が咲いていた。

その香りが、鼻腔をくすぐった。

その香りもまた、秋の訪いを実感させる。

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見上げれば、カラフルな色の葉が。

信号機のようにも、国旗のようにも見えた。

役割を終えた葉は、色を変えて、やがて舞い落ちる。

小さきものたちが、それを冬の間に肥やしにするのだろう。

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秋の深まりを感じるとともに、分厚い雲の向こうの陽光を私は想った。