6月、水無月に施行されるダービーは、いつ以来だろうか。
いつもの中京競馬場への道すがら、そんなことを考えていた。
調べてみたら、ワンアンドオンリーが勝った2014年以来だそうだ。
橋口弘次郎調教師の悲願が叶ったダービーから、もう11年かと思うと、時間の流れがよくわからなくなる。
今年のダービー・デイは、5月の名残のように、乾いた心地よい風が吹く日だった。
「競馬の祭典」とはよく言ったもので、祭り、つまりハレの日が、ダービーである。
この一週間は、競馬を愛する人にとって特別な一週間。
「今日はダービーだから」と、寛容になれたりするのもまた、ダービー・デイでもある。
かくいう私も、午前中に訪れた区役所では、「日曜に開けていただいて、ありがとうございます」と心の中で感謝するし、お年を召された方に席を譲って、落ちているゴミを拾ったりもする。
誰かの願いが叶う、特別な日。
その日の持つエネルギーは、やはり大きいのだろう。
ダービーだけは、当てたいと思う。
けれども、当てても、外れても、どちらでも楽しいのが、ダービーでもある。
それは、もう出走する18頭と18人の騎手に、それだけで拍手を贈りたくなるし、どの人馬が勝っても、もう諸手を挙げて「おめでとう」と言えるレースだからかもしれない。
無論、それはどのレースでも同じなのだけれども、やはり、ダービーは特別なのだ。
自宅でゆっくりもいいけれど、やはりこの瞬間だけは、多くの人と共有したいと思うのだ。
2025年のダービーもまた、特別な時間、特別な瞬間だった。
皐月賞で惜敗したクロワデュノールが、北村友一騎手とともに雪辱を果たした。
強い馬が、強い姿を見せる。
それは、実に難しいことではあるのだけれど、ダービーで1番人気を背負うという、極度のプレッシャーの中で、彼らはそれを完遂した。
それにしても、北村騎手は怪我で年単位の休養を強いられながら、最高の栄誉を手にするところまで登り詰めた。
1年以上のブランクがありながら、ダービーを勝つというのは、前例があっただろうか。
すぐには思い当たらないくらいの偉業だ。
特別な日、特別な馬、特別な騎手。
今年もまた、そんな場面を見ることができたことを、うれしく思う。
あたらめて、クロワデュノールと関係者の皆さま、おめでとうございます。